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◆世界遺産探訪




アンコール ★★★★

種類:文化遺産 所在国:カンボジア 探訪日:2002年7月


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前評判に違わぬ質と規模を兼ね備えた名遺跡。ただ、ジャングルの中にたたずむ秘境感を期待していたのに過剰整備の感があったのが残念。




[アンコールの魅力]
クメール建築の最高傑作と評されるアンコールワットを始めとして、巨大な観音菩薩の顔が浮かぶバイヨン、ガジュマルの巨木に覆われたタ・プロームなど、見応えある遺跡を擁するアンコール遺跡群。しかし、広大なエリアに広がる遺跡の一つ一つを回っていると、そのうちに飽きて写真を撮るだけのルーチンワークになってしまいがちだ。そういうときには人気のない静かな遺跡で足を休めよう。炎天やスコールから自分を護ってくれる遺跡に親近感を覚えるとき、それを糸口に往時の人々の想いや息遣いを感じることができるかもしれない。公園内の移動は機動性に優れたバイクタクシーがオススメ。細やかな浮き彫りが美しいバンテアイ・スレイなど、郊外の遺跡を見に行くのも遠足気分で楽しい。

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妖しい微笑をたたえたバイヨン


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白い袈裟の尼さんがじっと見ていた




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タ・プロームを覆うガジュマルの木


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自然に朽ちていくのは美しい

[タ・プロームで考える]
遺跡の真骨頂は、役割を終えた人工物が遥かな時間をかけて朽ち、自然に帰っていく様子にある。タ・プロームを覆うガジュマルは、今にも動き出しそうな攻撃的な気配を忍ばせており、悪者としてのほうが捉えやすいが、それは人間の情緒の問題だ。ガジュマルという自然に支配権が移りつつある姿は本来の姿なのではないか。アンコールのあちこちで大規模な修復作業が行われているのを見た。考古学上あるいは観光資源としての役割上、必要なことなのかもしれない。しかし百年後、今と同じ姿をとどめているだけの遺跡に魅力は感じない。せめて、タ・プロームだけはそのままに放っておいてほしい。遺跡をどのように後世に伝えていくかはこれまでも、そしてこれからも大変な難題である。



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