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◆夫婦で世界一周





写日記33.ブラジル素描

ブラジル(サンパウロ周辺)

2008年4月7日〜4月13日



二週間が三週間になり、そして三週間がさらに延び、結局ブラジルには一ヶ月近く滞在した。その間、僕らは伯父というよき解説者を独占していたので、ブラジルという国についてガイドブックから得る以上の知識を得られたし、ブラジルという国を通してその裏側にある日本という国を見つめなおせたように思う。ここでは少し背伸びをしつつ、ブラジルについて復習したいと思う。


ブラジルは実に豊かな国だ。鉄鉱石や石炭などの資源が豊富なことは地理の授業で習ったとおり。最近は油田も開発も相次ぎ、石油に関しても輸出大国への道を着々と歩んでいる。さらに「二十一世紀は水の世紀になる」とか言われているけど、豊富な地下水までもが広大な国土の下に眠っているとのこと。


作物栽培のための気候と土壌に恵まれていることも注目に値する。パルプ製造のためのユーカリを植えてもほんの数年で立派な高さに成長するし、世界中にある果物の全てがここで買えるんじゃないかと思うほど果物市場は盛況である。


大豆に小麦、トウモロコシやサトウキビ(バイオエタノール市場でブラジルが占める割合は七割以上)に関しても輸出大国として名を馳せており、農業に関してはもはやアメリカやオーストラリアを凌ぐ大国といって過言ではない。


一億八千万人を越える人口を養う食糧もエネルギーも自国でまかなえるし、その巨大な人口のお陰で内需も旺盛だというからたくましい。


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例えばサトウキビ畑。「あっ、サトウキビ」と思ったらそれはどこまでも続く


一方、工業やサービス業の分野では先進諸国に遅れをとってしまっている。経営コンサルティング事業を起こしているレオンから聞いた話では、外資企業が多くの産業で主要な地位についていて、ブラジル資本がそういうところに食い込むのは簡単なことではないらしい。


ブラジルの経済発展でオイシイ汁の大部分を吸っているのは一部の政治家と外資というのが現実なのかもしれない。ブラジルがブラジル人のために健全に発展していくには、これから立ち向かっていかなければならない現実だが、伯父曰く「高等教育をしっかり受けた人間の層が薄い」という現状ではまだしばらく時間がかかりそうだ。


しかし考えようによっては、これまで経済が奮わなかったためにアメリカがこけたらおしまいという「グローバル経済」にどっぷり取り込まれなかったとも言える。むしろ、グローバル経済に亀裂が入ったときこそ、ブラジルが外資を突き飛ばして飛躍するチャンスなのかもしれない。


大きなポテンシャルを持った国だ。一国だけで自立してもやっていけるのではないかとさえ思わされる。生きていくのに必要な資源にしても食糧にしても外国に頼り、それを買うための金の調達も外国頼みのところが大きい日本とは底力が違う。


伯父の家では毎日NHKを見ていたが、「アメリカのサブプライムローン問題で日本経済の先行きに不透明感」とか、「原油価格の高騰で多くの生活必需品が高騰」とか、「中国の輸出用作物の管理強化により食糧不足」とか、世界第二位の「経済のみ大国」の足腰の弱さを実感させられるニュースばかりだった。アメリカや中国の顔色ばかり伺わず、地球の裏側の国ともうまく手を結んでしたたかに資源や食糧を蓄えてほしいものである。


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妙に説得力のあった東洋人街の落書き


隣の芝は青し、ということで日本のよさに目を向けてみる。日本で光っているもの、それは勤勉さと向上心を持ち合わせた日本人そのものじゃないだろうか。今ブラジルに強い農業があるのは日系移民の貢献が大きいし、伯父が住んでいるインダヤツーバにはトヨタやヤンマーの立派な工場があって地元経済に寄与しているという。


「勤勉が長所」なんて言われると当の日本人としてはつまらない気持ちもあるが、国家としてはやはり大きな財産なのだ。そのお陰でここまでの経済大国になれたことは誰も否定しまい。ただ相対的に(あるいは絶対的にも)国力を落としつつある今、勤勉な日本人に依存しすぎた社会構造を、そして盲目的に勤勉だった日本人自身が変わるべきときが来ているのではないか。


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かつて「日本人」街と呼ばれた場所。今は「東洋人」街に変わった


ブラジルに視線を戻して、治安の悪さを見てみたい。これは日本で今問題とされている格差なんかとは比べ物にならない格差社会に原因があると思う。先にも述べたとおり、インダヤツーバには日本のトヨタを始めとする大手企業の工場がいくつかあるため経済的には潤っている。整然とした工業団地は日本のそれと見た目はなんら変わらない。大きく異なるのは背後にサトウキビ畑が延々と広がっていることぐらいである。


就業のチャンスが転がっている町には人が集まる。人が集まると活気がうまれる。しかし、その副作用は仕事にあふれた人たちによる強盗や誘拐といった犯罪。貧困層には文盲の人間も少なくない。文字の読み書きができなければ、工場で働くことすら簡単ではない。こういう人たちの底上げは今後絶対に必要だろう。


南米最大の都市サンパウロは断トツの経済力を誇る。片道四、五車線もある高速道路が整備され、真新しい高層ビルが競うように空に伸びている姿はまさに先進近代国家の姿だ。しかし、そういう風景の片隅にダンボールやブロック作りの家とも呼べないような工作物が重なり合うように建っている現実を見逃してはならない。


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高層ビル群へと延びる高速道路


課題はまだまだあるが(ブラジルに限ったことではないけど)、ブラジルの未来を何よりも明るく映し出していたのは人々の屈託ない笑顔だ。多様な人種を抱えながら、深刻な人種差別は見当たらないというのが素晴らしい。治安の悪さだって貧困が根となっているのだから、誤解を恐れず言えば健全だ。


陰湿なイジメや家庭内殺人が多い国、仮想敵国に戦争を仕掛けて金儲けを図る国、昔は植民地でやりたい放題やってたくせに今は上品ぶっている国、人権よりオリンピックを前にメンツばかり気にする国……。そういう国々よりもはるかに健全に見えた。ブラジルを美化しすぎだろうか。


これからも元気に成長していくであろうブラジルで、ダンボール作りの家を横目に高層ビルだけがどんどん高くなっていく国なのか、それともダンボール作りの家がなくなっていくのか見届けたいところだ。


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伯父さん、伯母さん、一ヶ月本当にありがとう!



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