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写日記32.にぎやかパンタナールブラジル(ボニート、南パンタナール) 2008年3月30日~4月6日 レンソイスのツアーから戻ってきた翌日にはパンタナールへのツアー旅行に出発。これには伯父と伯母も一緒に参加してくれたので、何の心配もいらない。 パンタナールはパラグアイ川が氾濫することによって定期的に大湿地帯。世界自然遺産にも指定されており、パラグアイとボリビアにもまたがるその面積は日本の本州ほど。七泊八日という日程が長めのツアーでさえ、訪れることができるのはパンタナールのほんの一部にすぎない。 ツアーの行程はパンタナールを少し南に外れたところにある渓流で有名なボニートで四泊、そして南と北に分けられるパンタナールのうち南パンタナールで三泊するというもの。 レンソイスでのツアーもそうだったが、ブラジルでのツアーはそれなりにいろんなイベントを組み入れてはあるものの、日本のものと比べたらゆったりしたスケジュールになっている。初日の行程はサンパウロからカンポ・グランジという町に飛び、そこからマイクロバスで三時間走り、ボニートのホテルに到着したらおしまい。まだ日は高いのに、である。
翌日からのボニート観光第一弾は青い地底湖が有名なGruta do Lago Azul。地底湖を近くで見るには鍾乳洞の滑りやすい石段を下りなけらばならないのだが、ここで心配性の伯母のキャラクターが開花。伯母自身も足元に集中して下りなければならないのに、伯父や僕らの心配をして注意を促す声が鍾乳洞に響き渡る。「そこ滑るわよ!」 地底湖は光の射し具合と見る角度によって色が変化する。入り口付近からは浅瀬の水色ばかりが目立って湖全体はほとんど群青色にしか見えなかったのに、遊歩道の終点から見る水は冴えるような青色をしていた。地底湖ばかりでなくつららのごとき鍾乳石や何百年もかけて背を伸ばした石柱も立派なものだった。
午後は湧水が水源のスクリ川でシュノケーリング。驚くほど透明度の高い清流を、体長30~40センチあるピラプタンガという魚が群れを成して泳いでいる。この中に自分が入れるとはありがたき幸せ! 素晴らしい時間だった。丹念に手入れされた水槽の中を、自分も魚たちと一緒に泳いでいる気分。いやいや泳ぐ必要もない。昆布のような水草が水中に森をつくり、その中を日本の熱帯魚屋で見かけたことのある魚たちが泳いでいる横を、流れに任せて浮かんでおけばいいのだ。 静かな水中世界に伯母の声が響き渡る。シュノケーリングを辞退した伯母はガイドとボートに乗っていた。ボートの上から水の中をのんびり眺めているのかと思いきや、ここでも心配性を遺憾なく発揮。「もっと中央に寄ったほうがいいわよ!」、「ほら、枝に気をつけて!」などなど。挙句の果てに、手足をほとんど動かさないでプカプカと浮いている伯父を捕まえて「ちょっと、死んだかと思っちゃうじゃない!」と終始にぎやか。 シュノケーリング終了後、伯母についたニックネームは「鬼コーチ」。ここだけの話、僕は伯母の注意が耳に入っても聞こえない振りをして、水草の森の中に入っていたり、木々の根元に潜む魚を観察したりしていた。あとで聞いたところ、伯父も嫁さんも聞こえぬ振りをしばしばしていたようである……。
次の日はペッシ川という渓流を訪れる。曇っていたので水の美しさに切れはないが、迫力よりも情緒を感じさせるような小さな滝や清らかな流れを見ていると赤目四十八滝でも散策しているような感覚に陥る。ここがブラジルだと思い出させてくれるのは、巨大なアリの行列や心配性の伯母の声だった。
伯父と伯母はベンチのある場所でしばし休憩。その間、残りのメンバーがガイドに連れて行かれたのは滝壺への飛び込み台。滝は大して大きくないが、大ナマズでも潜んでそうな暗くて深そうな滝壺へ飛び込むにはちょっとした度胸がいる。ハッ!と飛び込んで、無事水面に浮いてきたら一安心。しかし、さらなる度胸を要するメインイベントはそれからだった。 滝壺の側壁に人一人がやっと通れるぐらいの小さな穴があった。中は狭い狭い闇。そこに泳いで入っていくという。正直、僕はもう失礼したいところだったが、ほかのメンバーも入っていくし、嫁さんも行く気マンマンなので仕方なく覚悟を決める。にしても、穴を通り抜けるのは容易ではなく、前からガイドに引っ張ってもらってなんとか向こう側にたどり着ける感じだ。中にはふくよかな体が引っかかってしまって、この冒険をあきらめざるを得ない女性もいた。 意外に深くて足はつかないし、ギリギリ顔を出せるだけの空間はあるが、気をつけないと上から垂れている鍾乳石にぶつかってしまう。暗所恐怖症、狭所恐怖症、水恐怖症の人は発狂間違いなしの空間を前へ前へと泳いでいくと、やっとホッと一息つける空間に出た。そこがこの冒険の終点。別になんてことはない場所だが、ここまでたどりつけたメンバーは互いを讃え合って満足気だ。帰りは光に向かって進んでいくので気分的にはずっと楽だった。
この予想外の冒険には疲れたし、朝から空を覆っていた雲が雨が降らせ始めた。昼食後にほかのメンバーはまた別の川に泳ぎに出かけたが、僕らは雨の中泳ぎに行く気にもなれずウトウトと船を漕いでいた。
ボニート近辺は渓流やら清流には事欠かない。翌日もプラタ川というまた別の清流でシュノーケリング。伯父と伯母は近くを散歩でもしておくということだったので、僕ら二人だけで参加。透き通るような水の美しさはスクリ川にかなわないが、ここは魚の種類が豊富で、途中で頭上にホエザルが現れたりと飽きのこない川だった。
この日の午後は趣きを変えてアララ(コンゴウインコ)が巣を作っているという場所へ。コスタリカのコルコバードでもその姿は何度か目にしたが、ここではすぐに飽きてしまいそうなぐらいそこここの木でアララが羽を休めていた。 この生息地には体色が赤が基調となっているのと、青が基調になっているものの二種類がいる。青色のほうが僕好みだったが、数は赤色のほうがずっと多いようである。アララが一番様になるのはやはり飛んでいるとき。ギャーギャーと鳴きわめくのは少しみっともないが、長い尾を宙になびかせ、大きな羽をはためかせて飛ぶ姿はカッコいい。もっと眺めてたかったが、途中で雨が降り出したので退散。
ボニートで最後の夜となるこの日は、日本食レストランに出かけた。ブラジル人のコックが作る日本料理は不味いと不評だが、この店では日本人のおばちゃんが腕を振るってくれた。どれもうまかったが、絶妙に生姜を効かせたピラプタンガの焼き魚は絶品だった。その味につられてカイピリーニャのほうも許容量以上に飲んでしまった僕は、部屋に戻ったらバタンキューだった。
翌日は移動日。Boca da Oncaという滝に立ち寄ったあと、南パンタナールの中にあるホテルを目指す。徐々に周辺の景色が水気を帯びてくるのが分かる。湿地から一段高いアスファルトの道を快適に飛ばしていたが、ある地点で脇道に入るとぬかるみの道路に一転。高さ方向、横方向のどちらにおいても湿地との距離がぐっと狭まった。一気にパンタナールの懐に飛び込んだ感がする。 マイクロバスで大丈夫なのかといささか不安になる道だったが、運転手のおっちゃんは余裕の表情。大きなぬかるみを慣れたハンドルさばきでよけている。何の前触れもなく車を止めたおっちゃんは路面を指差して「オンサ」と教えてくれた。そこには大きなネコの足跡が。オンサ、すなわちヒョウの足跡らしい。警戒心の強いヒョウの姿を見るのはよほどラッキーでないと難しいが、闇の中、一匹のヒョウが徘徊している姿を足跡の上に描いてみるだけでちょっとした興奮を覚えるのだった。
やがて日没となった。車のヘッドライト以外、人工的な光が見当たらないこの場所では夕日の存在感は圧倒的。地平線の向こうに姿を隠したあとも雲をピンクや紫に染めて、一日を終わらせまいと粘っていた。
まだ最後の一絞りの明るさが残っているころ、マイクロバスからボートに乗り換えた。伯母は案の定、「こんなに小さいボートで大丈夫かしら」と心配していたが、ボートが動き出すと覚悟が決まったのか無口だった。
完全な闇が訪れた川で光るものが三つあった。船頭が前方を照らす白色のライト、川岸を舞うホタルの黄色い点滅、そして水中や岸辺に潜むジャカレー(カイマン。ワニの一種)の赤い目。 闇の中のボート移動は一時間弱で終了し、たどり着いたのはファゼンダ型リゾートホテル。野性味あふれる移動のあとに現れた豪華な宿泊施設は雰囲気もよく快適。しかも昔の農場を利用したものだから、周辺の景色から浮くようなことはなく、したがって興醒めすることもなかった。 翌朝は早起きしてファゼンダ周辺を散策。鳥たちを除けば見つけたのはアライグマのような小動物(名前を失念……)のみという残念な結果。そのあとは何をするでもなくファゼンダでのんびり。動物は主に朝夕に活動しているから、ということなのだろうが、日中の炎天下に出かけるのは僕らだってつらいので助かる。
夕方前にボートに乗り込み動物ウォッチングに出かける。闇の到来を前にして、様々な鳥たちが騒がしく巣に戻っていく。でもそれだけ。ボートのモーターがやかましいせいか、ここでも鳥のほかにはジャカレーを見かけたぐらいで、動物観察としては不発に終わった感が拭えなかった。
次の朝も早起きして、手漕ぎのボートに乗ってゆっくりと動物探し。川の上を静かに滑る手漕ぎボートなら、川辺やその向こうの木々に潜む動物たちの発見も期待できる。 が、僕らの船漕ぎの兄ちゃんはガイドとしての質はイマイチ。彼より早く僕のほうが樹上にいるイグアナを見つけたり、木の陰にいたホエザルを見つけて彼に教えるのだった。でも僕らの反応を見て、ジャカレーの群れまで数メートルというところまでボートを寄せてくれるいい兄ちゃんだった。
昼食後は釣りにチャレンジ。糸におもりと針がついただけの簡単な竿。鶏肉を針につけて川に垂らす。別にそれを狙いに来たわけではなさそうだが、目の前をカイマンが悠々と泳いでいく。カイマンは性格が穏やかで、こちらが近づけば逃げるようなヤツなので見慣れてくると可愛い。
暑さに負けそうだった。全然当たりもこないし。ほかの客が釣ったピラニアを見せてもらう。たくましそうな顎に鋭い三角形の歯が並んでいる顔は、カイマンよりもよっぽどタチが悪そうだ。どんな引きなのか、僕も釣ってみたい……。
危うく四人で坊主になりかけのところで、なんとか僕が釣り上げたのが小さなナマズの一種。ひれに毒があるから触っちゃダメだとガイドに注意された。黒く濁った川の中にはえげつない魚しかいないようだ。
日が傾いて涼しくなり出したところで、最後のイベント、乗馬にチャレンジ。誰かが手綱を引いてくれる乗馬ではないと知って、例のごとく伯母は「馬が暴れちゃったらどうするの」とためらいだしたが、三人で大丈夫、大丈夫と説得して出発。 よく調教された馬に安心したのか、伯母は途中から「楽しいわね~」とすっかりご機嫌。水たまりの中を、蚊の群がる草地を、枝に頭をぶつけそうになる森の中を馬で進んで行く。写真を撮るために自分で馬を止めたり、右へ左へと思い通りに進路を取れるだけでかなり楽しい。 無鉄砲な僕と嫁さんはそんな技術も持ち合わせてないのに、ときどき横っ腹を強めに蹴って馬を走らせた。あとで伯父に聞いたところによるとガイドに「あれは危ない」といい顔をされてなかったみたいだが、それでも止めはしないのが良くも悪くもブラジル流放任主義ということらしい。 日が暮れるまでたっぷり二時間の乗馬は、やり応え十分で楽しかった。何よりも最初尻込みしていた伯母が、「楽しいもんだわねぇ」と態度を豹変させているのが僕らとしても嬉しかった。乗馬が手軽に楽しめるブラジル。ひょっとしたら次に会うときには伯母は乗馬の名手になっているかもしれない。
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