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写日記05.憧れのモニュメントバレーへアメリカ(アーチーズ国立公園、モニュメントバレー) 2007年9月11日〜13日 ブライスキャニオンを出てからは、アーチーズ国立公園、モニュメントバレーの順に訪ねることにした。途中、キャピトルリーフ国立公園やキャニオンランズ国立公園などいくつか見所もあるのだが、全てを見て周る余裕はないのでできるだけ個性的なところをピックアップしたつもりだ。 ブライスキャニオンから北東方面に走りアーチーズを目指すわけだが、この区間は実に多様な自然が広がっており長い道のりでも飽きることがなかった。牛の飛び出しに驚きながら白樺の森を抜け、キャピトルリーフの岸壁を横目に走り、途中ハンクスビルという田舎町で一泊し、ひたすら直線が続く道路を時速130キロでかっ飛ばし、アーチーズに到着したときには「もうお腹いっぱい!」という感じ。
アーチーズとはその名のとおり、数多くのアーチ状の岩が存在していることで有名な公園だ。『地球の歩き方』によれば最近人気がうなぎ登りらしく、昼過ぎに到着してキャンプを計画していた僕らは相当ずうずうしかったに違いない。キャンプ場はなんと朝の7時半には定員に達したとのこと。 アーチーズは公園内の道路沿いにいくつかの駐車場があって、そこから歩いて様々な見所に向かうようになっている。だから、どこに駐車して、どこまで見に行くかということをあらかじめ計画しておかないと、大したことないところばかり見ているうちに半日が終わってしまう恐れがある。 『地球の歩き方』やビジタセンターの情報を参考にランドスケープアーチとデリケートアーチは見逃せないと判断した僕らは、スリーゴシップスやバランスロックといった前座的なポイントはほどほどに公園の奥へと急いだ。
公園の最奥部にある駐車場に車を停め、ランドスケープアーチへ。想像以上の大きさでありながら、糸をよったような繊細なプロポーションをしており、女性的な美しさを醸し出していた。いつ崩壊してもおかしくないという危うさもこのアーチの魅力かもしれない。
そして、最後に残しておいたデリケートアーチ。駐車場から一時間ほど歩かないとたどり着かないもったいぶりようがいい。トレイル沿いにはケルン(石を積み上げた道しるべ)があるが、多くの観光客がいるので迷うことはない。 で、たどり着いたデリケートアートは悪くない。完全なアーチを創り上げた自然の奇跡には驚嘆するし、大きさもあっぱれ。しかし、どうも心に響いてこない。好みの問題と思うのだが、シャッターを押す回数もどうも鈍りがちだった。 それよりもなぜみんなアーチを遠巻きに見ているだけで、アーチと記念撮影をしないのだろうという疑問で頭は占められていた。アメリカ人は写真好きと思っていたのだが……。
いまいち盛り上がれないまま(嫁さんはそれなりにアーチーズも気に入ったようだが)、次は期待の大きいモニュメントバレーへ。 自転車で七年かけて世界一周をした石田ゆうすけさんがその著書の中でアメリカではモニュメントバレーがよかったと書いていた。自転車の速度で世界を見て回った人が言うぐらいなんだから相当すごいんや、とそれ以来いつか行きたい場所として僕の中でリスト入りした場所なのだ。 絶対にすごいはずという先入観があったことは否めないが、それでも国道163号線を走っていると遠くに見えてきたモニュメントバレーのシルエットは、そこらの岩山とはちょっと違うインパクトで僕らの前方に姿を見せた。
モニュメントバレーでは大地に屹立するビュートと呼ばれる残丘がほかでは見られない独特の風景を創り出しているのだが、ここではビュートを目の前にキャンプができると聞いている。だからキャンプ場が空いているかどうかはこれまで以上に重大な問題だったのが、これが拍子抜けするほどにあっさりとサイトが確保できた。 仮設トイレといくつかのテーブルだけがある平地がキャンプ場だったので、勝手に好きな場所を選んでテントを建てればいいようだった。もちろん僕たちは三つのビュートが眼前にそびえる一等地にテントを設営。でっかいキャンピングカーに挟まれてちと肩身は狭いが……。
モニュメントバレーは先住民ナバホ族の居留地内にあり、彼らが運営しているツアーに参加すれば乗用車ではアクセスできないエリアも訪れることができる。けど、その額は安くないし、僕らはテントから見渡せる景色に満足していたので、どこにも行かずここでただのんびりと過ごすことにした。 日が暮れ始めると、ビュートは赤色を濃くしながらその影を長くし、ますます僕らをうっとりとさせた。太陽が沈んで星が夜空を埋め尽くすようになると、ビュートは闇の中でその輪郭を際立たせていた。 僕はどうも「聖地」というキーワードに弱いらしい。聖地と聞いた途端、そこに流れている静かなでも力強い何かを想像し、風景を美化させてしまう。インドのバラナシやオーストラリアのウルル(エアーズロック)でも聖地というだけで無性に心がうずいたものである。
当然、モニュメントバレーの朝もいい。顔をのぞかせた太陽は「聖地」というフィルターを通して、僕にはとんでもなく神聖なものに映る。しかし、あえて聖地ということを無視してみても、やっぱりうっすら開けた目に入る景色は素晴らしいとしか言いようがなかった。 気に入れば二泊でも三泊でもしようかと考えていたが、たった一日でモニュメントバレーにすっかり魅了され、逆に「もうええっか」という気持ちになった。あまり長居して感動曲線が下降するのが嫌だったのかもしれない。 そうは言いながらも、最後はやっぱりモニュメントバレーを振り返り振り返り、後ろ髪を引かれるようにして次の地へと車を走らせるのだった。
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