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写日記06.絶景麻痺?!アメリカ(アンテロープキャニオン、グランドキャニオン国立公園ノースリム、セドナ) 2007年9月13日〜16日 モニュメントバレーまでは比較的ルートを決めやすかったのだが、そこから先は悩んでしまった。アメリカで見逃せないと考えていたのが、モニュメントバレー、セドナ、ホワイトサンズ国定公園の三ヶ所。この中でホワイトサンズだけはグランドサークルから南東方向に大きく外れた場所にあり、片道500マイル(800キロ)の行程を行かなければならない。 ホワイトサンズに行くなら、モニュメントバレーから東に戻り南下していったほうが近い。でも、少し西に行けばグランドキャニオンやセドナが僕らを待っている。安直だが面倒なホワイトサンズは後回しにして、磁石に引っ張られるように西に向かうことにした。 まずはアンテロープキャニオン。アンテロープキャニオンは水の流れでえぐられてできた狭い谷、いや、溝と言ったほうが近いほどの小さな隙間で、正午に近い時間帯にはその狭い空間に光が差し込み、幻想的な風景が展開されるという。 しかし、モニュメントバレーを発ったのは昼過ぎ。すでに光のショーは終わっているはずなので、アンテロープキャニオンのすぐそばにあるページという町で早めにチェックインし休養日に当てることにした。 『地球の歩き方』を参考にBashful Bob's Motelというモーテルにチェックイン。このモーテルが実に居心地がよかった。まず、オーナーのボブがいかにも人のよさそうなおじいさんで旅人の心を癒してくれる。若かりしころは日本に兵隊として住んでいたこともあり、「もしもしかめよかめさんよ♪」なんて歌いだすお茶目なおじいさん。 そして、部屋は普通に一世帯住めるほどの広さで、キッチンとダイニングがあり、ソファーが二組置かれたリビングがあり、さらに寝室は二つあった。そんでもって、税込みで39ドルという安さがありがたい。僕たちはチェックインしてから一歩も外に出ることなく、この快適な部屋での時間を楽しませてもらった。
翌日もチェックアウトの時間まで部屋でのんびりしてから、アンテロープキャニオンに出発。アンテロープキャニオンはアッパー(上流側)とロウアー(下流側)があるが、僕らは自分たちで勝手に歩けるというロウアーのほうに行った。 モニュメントバレーと同じくここもナバホ族の管理下にあり、国立公園や国定公園はどこでも行けるパスを持っている僕らも入場料を払わなければならない。しかも、一人21ドルとは結構きつい。モニュメントバレーでも5ドルだったのに……。 入り口は思った以上に狭い。はしごを使って降りていくと、岩のカーテンに囲まれた空間が奥へ奥へと続いている。「噂どおり、こりゃきれいだわ」とシャッターを押しまくる。曇りがちな天気だったが、たまに太陽が雲間から顔を出すと、すーっと光がキャニオン内に差し込み、岩の曲線美に直線的な光が模様を創る。それは確かに幻想的な美しさだった。 しかし、何にも労せずに見た風景だからだろうか。僕の中ではアンテロープキャニオンはきれいという以上の何かまでは昇華せず、町中でとんでもない美人を見つけて幸せでした、という程度でしかなかった。後で振り返っても、冷静に「めっちゃきれかったな」とは思うのだが……。
さて、次は大御所グランドキャニオンへ。グランドキャニオンは東西に走っている渓谷を南側(サウスリム)と北側(ノースリム)からそれぞれ見ることができる。観光客の大半は数多くの展望ポイントがあるサウスリムを訪れる。僕も八年前はサウスリムに滞在した。しかしノースリムにも「人が少なくて静か」、「美しい広葉樹の森が広がる」など独自の魅力があるらしいので、今回はノースリムからアクセスすることにした。 ノースリムへと続く道は確かにサウスリムとは違い、草原や広葉樹から成る穏やかな風景が広がり、この先に大峡谷があるようには見えない。公園に至る道中でいいキャンプ場を見つけたので、グランドキャニオンは翌日にお預けとし、さっさと晩飯を食べて寝袋にくるまり、朝焼けのグランドキャニオンに備える。 で、またやっちゃった。朝寝坊。目を開けたときにはもう明るく、もうそれならいっそのことと二度寝をする。なんか、いっつもこんなことやってる気が……。はぁ。 観光を始めたのはもう昼前。山火事をあえて放置するという公園の管理方針を目の当たりにしながら、展望ポイントを見て回る。やはりグランドキャニオンのスケールはすごい。これまでに訪れたどの公園とも比較にならない。初めてこの大峡谷を目にした嫁さんもこのスケールに圧倒されているようだ。ただ、峡谷の見え方や太陽の当たり方といった点でサウスリムのほうがより人を魅了させるものを持っていると感じた。 「嫁さんにサウスリムも見せてあげないと」との思いを抱きつつノースリムを後にした。しかし、このままサウスリムに向かうとちょうど週末に当たり相当な混雑が予想されるので、サウスリムは後回しにし、セドナ、ホワイトサンズの順に進路をとることにした。
セドナは以前『世界ふしぎ発見!』で紹介されていて、「アメリカにもまだこんなミステリアスな聖地があったのか!」と感動を覚え、今回の旅でどうしても行きたいと考えていたところだ。『地球の歩き方』にも紹介されていないぐらいだから、秘境感あふれる魅惑的な場所に違いない。 大きな期待を胸にセドナという町に到着したがどうも様子が違う。町のメインストリートにはこぎれいなショップが立ち並び、行き交う人々はどこかハイソな空気を醸し出している。軽井沢のような雰囲気だ。もちろん秘境感のかけらもない。ビジタセンターでオススメのポイントやトレッキングコースを教えてもらったのが、どのポイントも人が多く、やたらと豪奢な屋敷が並ぶ住宅街にあったりして興醒めだ。
地図を見て、できるだけ町中から離れて自然を楽しめそうなトレッキングコースを探す。町を外れると少しは雰囲気が出てくる。たまたまあるトレイルのスタート地点にたどり着いたのでトレッキング開始。が、ここでも肩透かしを食らう。 超高級リゾートと思われる施設がトレッキングコースの脇に現れるし、行けども行けども森の中で劇的に展望が開けることもないし、時間もあまりないしと一時間半ほど歩いて僕たちは来た道を引き返すことにした。途中で夕立に降られ、イノシシに出くわし、とちょっとした刺激もあったがはっきり言えばつまらないトレッキングだった。 『世界ふしぎ発見!』の編集が上手すぎたのか、それとももっと時間をかけて散策しなければいけなかったのか。あるいはひょっとしたら、これまで数々の素晴らしき岩の芸術品を見てきた僕たちの感覚が麻痺しつつあるのかもしれない。とにかくセドナとはどうも縁がなかったようである。
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