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◆夫婦で世界一周





写日記07.手負いのレッドでホワイトサンズ

アメリカ(ホワイトサンズ国定公園、サワロ国立公園)

2007年9月17日〜19日



セドナからホワイトサンズへの距離は概ね500マイル(800キロ)。途中、嫁さんがアウトレットのショッピングモールを見つけてしまうといった不運もあり、ホワイトサンズへのゲートシティとなるラスクルーセスに到着したのはセドナを発った翌日の夜。ほんとに遠いわ、ホワイトサンズ。セドナが期待外れに終わったこともあり、ホワイトサンズにかかる期待は否が応にも高まっていた。


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雨が降る中、虹に向かって車を飛ばす


その晩、モーテルの駐車場で晩飯後の一服をしているときだった。何気なくレッド(僕らの愛車)を見ていて、右前輪の空気が抜けていることに気が付いた。パンクというほどでもなさそうだが異常は明らかである。このタイヤでフリーウェイをかっ飛ばしてきたことを考えると怖くなった。実際、アメリカのフリーウェイの路肩にはバーストタイヤの残骸がゴロゴロしている。下手をすればああなっていたのか……。


翌朝、ガソリンスタンドで空気を入れてホワイトサンズへ出発。その道中はメキシコ国境が近いのと米軍基地がある関係で、検問所があったりして少し空気がピリピリとしている。荒野の上空を戦闘機が飛んでいくといったあまりハッピーでない光景が続く。


ホワイトサンズのビジタセンターに到着し、タイヤをチェックすると悲しいことにまた空気が抜けている。手探りで空気が抜けている場所を見つけ、指を当ててみると金属の手応え。どうやら釘でも踏んでしまったようだ。


これはスペアタイヤに交換するしかないだろうと、タイヤ交換をしたことのない僕がうんざりした表情を浮かべていたのに気付いたのだろうか。通りかかった男性が「パンクか?タイヤ交換はしたことあるのか?」と声をかけてきてくれた。「いや、今から初めてやるんだ」と困った表情で答えると、それが当然のごとく彼はスペアタイヤをトランクから取り出し、ジャッキで車を持ち上げ、スパナでナットを外し……と黙々と作業を始めた。


僕もさすがに自分のことを人に任せっきりにはできないと手伝ったが、彼の慣れた手つきで作業が進められていくことには多大な安心感を覚えた。自分たちで四苦八苦しながらでは常に「これであってるのか?」と不安がつきまとっただろう。


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ジョージに教えてもらいながら慣れない手つきでやってます


恥ずかしいことにスペアタイヤにさえ替えればそれでおしまいと思っていた僕に、「これでしばらく走れるから、まず近くの町でタイヤ修理をしてもらったほうがいい」との的確なアドバイスをくれた彼の名はジョージ。奥さんのカレンと二人の息子も作業をずっと見守ってくれていた。タイヤ交換が終わると、さっさと去ってしまう潔さもよかった。


誰かの親切を受けながら生かされているという事実を旅先では痛感する。慣れない土地での無力さや感受性の高まりがそうさせるのだろう。誰かに何らかの形でこの親切を返していかないと、と親切を受けた直後は強く思うのだがそのうちに忘れてしまう。情けないことだ。


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ジョージ一家、ありがとう!


近くのアラモゴードという町でタイヤの修理を済ませ、改めてホワイトサンズを訪問。いろいろあって、はるばるやってきました感が非常に強いホワイトサンズは、しかし、僕らの期待を裏切ることはなかった。「灼熱の雪景色」とでも題名をつけたくなる景色。


これまで岩系の自然ばかり見てきたので、砂というのは新鮮で、触って遊べるのが妙にうれしかった。見た目は雪か塩のようだが、石膏の粒子から成る砂はさらさらと手のひらから滑り落ちる。


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砂と触れ合い中


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あまりの美しさに浮かれてます


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石膏の粒子からできた白い砂丘が続く


にしても暑い!そしてこんなところにもうっとうしい虫がいる。僕はそんなに不潔な人間ではないと思うのだが、どこでもよく蚊やハエがまとわりつくのはなぜなのか。まあしかし、そんなことを差し引いてもこの白い砂丘との出会いはそれ以上の感動があった。


風が強い日には砂丘は一日で数メートル移動するという。砂に覆われないよう、それ以上の速度でユッカという植物は生長する。そして、また風が吹き砂が飛ばされると、むき出しになったユッカは自分の重みに耐え切れなくなって折れて枯れてしまう。不器用だけど必死に生きる生物がこのきらびやかな白砂漠にもいる。


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気取った後ろ姿で一枚


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頑張って根を張っているユッカ


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レンジャープログラムに参加して少しお勉強


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生物に厳しい環境下でユッカはこんなにも生長する


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月と夕焼けとホワイトサンズ


公園を出たのはすっかり暗くなってからだったので、僕は近くの町で一泊すればいいと考えていたのだが、嫁さんが積極的に先を急ぐので僕もそれに乗っかることにした。で、結局二人で運転を交代しながら日付が変わるまで飛ばして、ツーソンまでの300マイル(480キロ)を走った。


そのおかげで次の日は心置きなく朝はゆっくり寝ることができた。そして、最後の訪問地と決めたグランドキャニオンのサウスリムに向かう道中、寄り道のつもりでツーソンの郊外にあるサワロ国立公園を訪れた。公園の名前になっているサワロとは背の高いサボテンの一種。


これがあまり期待せずに行ったのだが、いやはや予想以上に背の高いサボテンの群生は見応えあり。砂漠のような場所にサボテンが生えている寂しい場所かと思いきや、複数の種類のサボテンが実に豊かな緑の世界を生み出しているのもよかった。


サボテン好きの嫁さんは特に興奮気味。ユーモラスな形をしたサワロたちと記念撮影をしてはしゃいでいた。しかし、サワロで予定以上の時間を費やしたため既に時間は午後1時過ぎ。果たしてグランドキャニオンの夕日に間に合うだろうか……。


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こうやって見ると分からないがこいつらでかいんです!


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ほらでかいでしょ?


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枯れたサボテンは物悲しい


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ほんの〜♪ちいさな〜♪できごとに〜♪


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まるで動き出しそうな個性的なサワロ


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嫁さんはご機嫌です



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