◆夫婦で世界一周 |
|
◆ホーム
|
写日記15.動物パラダイスコスタリカ(サンホセ、トルトゥゲーロ国立公園、カウィータ国立公園) 2007年10月25日〜11月4日 サンペドロ・ラ・ラグーナからは一気にコスタリカの首都サンホセを目指した。サンペドロを朝六時に出る旅行者用のミニバスでグアテマラシティに向けて出発。グアテマラシティでメキシコ〜パナマを結ぶ国際バスTICA BUSに乗車。途中でエルサルバドルの首都サンサルバドル、ニカラグアの首都マナグアに一泊ずつして三日後の夜にようやくサンホセに到着した。
サンサルバドルやマナグアの夜は見た目にも恐ろしげ。途中、トイレ臭が車内に漂うのに苦悶。そして疲れて到着したサンホセは闇の中。しかも、ガイドブックの地図とバスターミナルの位置の辻褄が合わず(後ほどバスターミナルが移動していたことが判明)、自分たちがどこにいるかもよく把握できない。 たまたま見つけたHotel Petitは値切っても一泊30ドルと僕らには辛い料金設定だったが、闇夜のサンホセを歩く気にもなれず手頃な宿探しは翌日にまわしチェックインすることにした。 日本ではあまり名前を聞くことのないコスタリカだが、世界的な環境保護先進国として多くの欧米観光客を惹きつけている。また憲法に非武装が規定されていて、中立政策がとられている平和国家であり、「中米の優等生」なんて例えられることもあるらしい。 すこぶるイメージのいい国なのでサンホセは洗練された都会なんだろうと期待していたが見事に裏切られた。ほかの中米諸国と変わらない猥雑とした町並み。改めて中心部の安宿を探しても清潔感とセキュリティの面で不安があるものばかり。
Hotel Petitは決して安くはないが、無線LAN完備、ホットシャワーが快適で、部屋は清潔でこじゃれている。たぶんイタリア系のオーナーのセンスがいいのだろう。少し町外れにあるのが唯一の欠点だが、「あと最低五泊はするから」とお願いすると料金を一泊25ドルまで下げてくれたこともあり、Hotel Petitをコスタリカ滞在中の拠点とし各国立公園に小旅行することに決めた。
その第一弾に選んだのがカリブ海側に位置するトルトゥゲーロ国立公園。トルトゥゲーロは地名自体が「カメのいる場所」という意味であることからも想像できるとおり、ウミガメの産卵で有名な場所。ほかにもジャングルを縫うように流れる川や運河をカヌーで進みながらの動物ウォッチングも楽しめる。 トルトゥゲーロへのアクセスは水路と空路に限られる。僕らはもちろん安いボート移動を選んだのだが、これがいきなり雰囲気満点で楽しい。原色の美しい鳥や小さなクロコダイルを見ることもできた。
トルトゥゲーロの村に自動車は存在しない。町のメインストリートは人間や自転車が行き交うのみ。黒人が結構住んでいて、どこからともなくレゲエが聞こえてくる。白砂の海岸にブルーの海を想像していたので荒波のカリブ海にはがっかりしたが、宿の部屋から波音が聞こえるのは悪くない。
初日の夜はウミガメの産卵見学ツアーに参加。と言ってもこの時期は既にシーズンの終盤で、一晩に上陸する母ガメは二〜三匹程度。見られるかどうかは微妙なところ。 満月がきれいな夜。産卵エリアへのカメラと懐中電灯の持ち込みは禁止されており、カメが海からやって来るのをじっと静かに待つのみ。ガイドのトランシーバーから早口のスペイン語が聞こえると、彼は僕らを砂浜の一角へと導いた。 そこには涙を流しながらピンポン玉みたいな卵を産み落とすアオウミガメが。写真撮影ができない分、自分の目でしっかりとこの大自然のほんの一部の、ささいな、しかし感動的な営みを見届ける。 そしてさらなる感動シーンが!なんと、シーズン初めに産み落とされた卵が孵化していたのだ。一回の産卵で産み落とされる卵は約百個。殻を破って出てきた百匹の子ガメたちは手足をジタバタさせながら、しかし確実に海を目指している。この中で無事成長できるのはわずか一匹。動物の世界に人間の情緒は無用と分かっていても、なんとかこいつら全部生き延びてほしいと思わずにはいられなかった。 結果的には満月に照らされた海からやって来る親ガメとそこへ戻っていく子ガメの両方を見られたラッキーな夜だった。
翌日は特に何をするでもなく一日を過ごした。僕らものんびりしているが、宿で働く男たちもかなりのスローペース。二人のおっさんがハンモックで一緒に揺れながら雑談に興じている。太陽が高くなり、やがて傾き、暗くなってもひたすら話している。女子高生のおしゃべりでもあるまいし何をそんなに話をすることがあるのだろうか。そんなおっさんたちを眺めながら、ふと、ヒグラシの鳴く日本の晩夏の夕暮れを思い出したりした。
トルトゥゲーロでは外すことのできないカヌーツアーにも参加した。ガイドのエルネストは一見無骨な感じだが、す〜と岸辺にカヌーを近づけて次々とジャングルや水草に潜んでいる動物を教えてくれるプロの仕事振りには脱帽。近くに寄って、居場所を指してもらっても僕らにはなかなか見つけることができないのに……。
川の支流を上がっていくと、両岸の木々が光を遮るようになる。無口なエルネストが「ここ、静かでいいところだろ?」と珍しく話しかけてくる。滑るように水面を進むカヌー。聞こえるのはパドルが水を分ける音と鳥の声。そして、葉っぱに残っている前夜の雨の滴がジャングルの中でポタポタと落ちる音。 エルネストの見事なガイドのおかげで、多くの鳥類にカイマン(小型のワニ)、カワウソ、ハウラーモンキー、スパイダーモンキー、ナマケモノ、世界一美しいトカゲと言われるグリーンバシリスクなど実に様々な動物を見ることができ、ウミガメの産卵ツアーに続きカヌーツアーも満足のうちに終わった。
国立公園内にはトレイルも整備されており、自らの足でジャングルを歩くと頭上をスパイダーモンキーが渡っていったり、不気味なキノコを見つけたりとまたカヌーから見るのとは違う角度でトルトゥゲーロの自然を楽しむことができた。 海、川、ジャングルが密接し多様な動植物を育んでいるトルトゥゲーロ。自然を保護することに力を入れながら、自然を売りにして生計を立てている村民たち。「よっ、さすが環境保護先進国!」と能天気に拍手を送りたいところだが、穏やかな流れを爆走するモーターボートは僕たちの目にも脅威に映ることがあったのだから、動物たちはさぞかし恐怖を感じているに違いない。 しかし、モーターボートを利用しているのはまさに僕たち観光客。世界の大自然や絶景を自分の目で見たくてあちこち出かけているが、自分が訪れることで図らずも自然に負荷を与えているという事実を前にいつも複雑な気持ちになる。それでも出かけ続けるのはただのエゴイズム。自分の中でどうスッキリさせればいいのか未だに分からない難題だ。
トルトゥゲーロを去り次に訪れたカウィータ国立公園は同じくカリブ海側にある国立公園。トルトゥゲーロにはなかった白砂のビーチも広がっていてちょっとしたリゾート気分が味わえる。加えてビーチ沿いのジャングルにはトレイルも用意されており、動物ウォッチングも楽しめるという一粒で二度オイシイ公園だ。 トルトゥゲーロからリモンという町までは、カリブ海に沿って伸びる運河をボートで移動。運河と言っても川みたいなもので、この移動でも幾種類かの動物を見ることができる。中でも見応えがあるのが体長が3〜4メートルあるクロコダイル。トルトゥゲーロで見たカイマンはもっと小さく性格も穏やかで、顔つきも幾分可愛らしかったが、クロコダイルは背中の凹凸も荒々しく見るからに悪そうな顔をしていた。
少し南に下りたせいか、真っ青なカリブ海のせいか、カウィータは明るい印象。トルトゥゲーロにも黒人は少なからずいたが、カウィータは圧倒的に黒人が多い。一瞬、ここはコスタリカか?と首を傾げたくなるほど。ジャマイカなどから移住してきた人たちらしいが、スペイン語を話す黒人というのは不思議な感じだ。
国立公園内にあるトレイルを歩くとトルトゥゲーロに負けないぐらい様々な生き物に出くわした。自分よりも大きな葉っぱの切れ端を運んでいるハキリアリや、キラキラと青い光を放ちながら木々の間を舞うモルフォ蝶、アライグマの家族、子どもを背負ったノドジロオマキザルの母親、海岸を泳ぐエイなどなど。 トレイル散策を楽しんだ翌日はビーチで海水浴と日光浴をしながらのんびり過ごそうと思っていたが、天気が崩れて海は荒れ気味。波にさらわれながらの海水浴はすぐに疲れて、地味に砂の城を作って過ごした。
期待以上に多くの動物を自分たちの目で見ることができたコスタリカ小旅行第一弾。次はどこに行こうかと悩んでしまうが、それはそれで楽しいものだ。
|