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◆夫婦で世界一周





写日記18.絶景だらけのギアナ高地

ベネズエラ(カラカス、シウダー・ボリーバル、エンジェルフォール)

2007年11月21日〜27日



サンホセからマイアミ経由でベネズエラの首都カラカスへ。火災事故で滑走路の誘導灯が故障したため飛行機はカラカスには降りず、カリブ海に浮かぶオランダ領クラカオ島に緊急着陸。そこで二時間待たされたのち、カラカスのシモンボリーバル国際空港に到着したのは、予定の21時15分を大幅に遅れ日付が変わった0時30分。


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緊急着陸で騒然とする機内


それでなくともカラカスはこの旅始まって以来の危険都市としてビビっていたのに、こんな深夜に降り立つことになるとは……。しかし、そういう不安を一時的に吹き飛ばしてくれるほどに空港は近代的。ピカピカの白いタイルフロアーに蛍光灯が反射してまぶしいほど。


到着ロビーに出るとすぐに闇両替を持ちかける男がやって来た。ここベネズエラでは政府が定める公定レートと実経済に合わせて変動する闇レートが存在する。旅行者はレートが断然有利な闇両替を利用するのが一般的。例えば公定レートが1ドル=2,150ボリーバルなのに対し、闇両替屋は3,000ボリーバルで話を持ちかけてきた。しかし町中ではもっといいレートで両替ができるのは常識なので無視。


僕たちに両替する意思がないことを知ると男はタクシーの斡旋業者に早変わり。空港でこういう商売を行うには許可証が必要らしく、首からIDをつけた男たちが多い。なのに僕たちに近づいてきた男はIDなし。そのことを問うと、「今日、たまたま忘れたんだ」と怪しんでくださいと言わんばかりの答え。


この男は却下。しかし、IDを持った男たちもIDなし男の肩を持つので信用ならない。一体誰を信じればいい?少々金をぼられるぐらいならいい。ここカラカスで恐れているのはタクシーで知らないところに連れて行かれて身ぐるみ剥がされるという悪質な犯罪だ。タクシー選びは慎重にしなければならない。


空港内の男たちは全員相手にせず、直接タクシー乗り場に向かった。そこには正規のタクシーであることを示す黄色いナンバープレートをつけた車が並んでいた。少し安堵する。ドライバーと直接交渉するも50ドル以下にはならない。しかし、値下げしないことに安心感を覚え(身ぐるみ剥がす気なら安くしてでも乗せようとするだろう)、できるだけ人柄のよさそうなドライバーを選んでタクシーに乗り込んだ。


空港を出ると山肌に粗末な家屋がぎっしり建っている様子が、白熱灯の下に浮かび上がっている。これはランチョと呼ばれる貧民街。間違えても旅行者が入ってはいけない地域。そんな地域がきれいな夜景を作り出していることに複雑な気分になる。


タクシーはきれいに整備された高速道路を滑るように走り、カラカスで一番治安がいいと言われるアルタミラ地区のホテルに無事たどり着いた。午前2時50分。疲れた〜。


朝起きて窓から外を眺めると「これが治安がいいと言われる地区か?」と首を傾げたくなる景色だったが、アルタミラの中心部へと出かけると印象が変わった。山をバックに近代的な高層ビルが建つ、神戸に似た洗練された都会に見える。そして、その好印象を台無しにしているのが品のない落書きの多さ。つかみにくい都会だ。


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部屋から見える景色は治安のいいエリアには見えなかった


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アルタミラ中心部はきれいに整備されていた


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近代的な高層ビルも


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落書きは建物、看板、そしてバスにまで


町中でチャベス政権に反対する学生デモがあった。隣で見ていたおばちゃんが「チャベスは自分のことを立派な政治家だと世界にアピールしているけどただの独裁者よ。憲法違反だって平気でやるし、次の選挙でも絶対彼が勝てるように仕組まれてるの!」と英語でまくしたててきた。「でもベネズエラはいいところよ。ベネズエラへようこそ!」と最後に言い残して。


ベネズエラを旅行中、"Si, con Chavez!(そう、チャベスと一緒に!)"というスローガンを無数に見た。壁に書かれているものもあったし、電柱に結ばれた旗もあった。無料でバッチを配るキャンペーンも見たし、スローガンが入ったTシャツを着た若者も多くいた。僕にはチャベスがどういう政治家か判断するだけの知識と洞察力はないが、この圧倒的な宣伝と欧米諸国を攻めるときの口調には気味悪さを覚える。


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チャベス支持の落書きの向こうに広がっているのはランチョ


町なかで闇両替屋に声をかけられるのを待っていたのに、そういうときに限って誰にも声をかけられない。ホテルの両替で済ますことにした。1ドル=4,250ボリーバルというのは、最近まで3,000半ばで推移していたことを考えると悪くないレートだと判断したからだ。多少レートが悪かったとしても、ホテルという安心料を金で買ったのだと思えばいい(しかし、あとで闇レートは5,000以上が当たり前と知って大ショック!!)。


僕らはその夜にはシウダー・ボリーバルに向かう夜行バスに乗り込んだ。冷房が効きすぎて寒いと評判のベネズエラのバスだが、本当に半端じゃない寒さだった。シャツ、トレーナーの上にダウンを着て、さらに毛布をかぶっても隙間から入ってくる冷気に目が覚めてしまうほど。ベネズエラ人も寒さ対策万全で乗り込んでくる冷凍バス。極寒であることさえ除けば広くて快適なバスなのに、一体誰が何のためにこんなに冷やすのか。


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本当に寒かった!


シウダー・ボリーバルはボリーバル州の州都。大河オリノコ川に面する町はそれなりに賑わいがあるが、大した見所はない。旅行者にとってはエンジェルフォールへ向かう際に起点となるというだけ。僕らは翌日出発のエンジェルフォールツアーに申し込んだ。


ここで「エンジェルフォール」という名前について少し補足。ちょっと前まで僕は「世界一落差のある滝が『天使の滝』とはなかなか粋やな〜」と思っていた。しかし、これは間違い。エンジェルは滝を発見したアメリカ人の名で、天使とは何の関係もない。残念!


翌朝、ツアーを申し込んだAdrenaline Expeditionsへ。八人のツアーメンバーが集まると、まずは車で三時間ぶっ飛ばしラ・パラグアという町へ。そこからセスナに乗り換え、エンジェルフォールのあるカナイマ国立公園の玄関口カナイマに向かう。


セスナはラ・パラグアの前を流れる川を下に見ながら上昇。しばらく湿地帯の上を飛んだあとは、どこまでもジャングルばかりが広がっている。そのジャングルからすくっと立ち上がったように見える大地がテーブルマウンテン(現地語でテプイ)だ。


ギアナ高地には深く濃い密林の中にテプイが散在しており、その多くは常に厚い雲に覆われ未だ人類未踏の地。最近まで衛星写真を撮ることも困難だったという。ギアナ高地が「地球最後の秘境」と呼ばれる所以である。


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蛇行する川を見ながらセスナは高度を上げる


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密林の向こうにうっすらとテプイが見える


カナイマは空路でしかアクセスできない陸の孤島。カナイマ湖を囲むように宿泊施設や商店が並んでいるだけの、一時間もあれば一通り見て回れる小さな町だ。


カナイマで昼食を済ましたあと、ボートに乗ってカナイマ湖にある四つの滝を間近で見学。滝はまあまあ迫力があるが、それよりもボートが上げる水しぶきでずぶ濡れになる。「なんか違うやろ〜」と思いつつとりあえずワーワー騒いで楽しんだもん勝ち。


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カナイマ湖の滝にボートで近づく


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滝ではなくボートが上げる水しぶきでびしょ濡れ


町の対岸でボートを降りてしばらく歩くとエル・サポの滝が見えてくる。この滝は裏側を歩いて抜けることができる。みんな濡れても平気な格好になって、カメラの防水を厳重にし通り抜けに挑む。


一番激しいところは、滝のしぶきでまともに目を開けられないほど。そしてすぐそばを流れ落ちる滝に飲み込まれそうな恐怖感を覚える。なかなかスリリングな体験だった。


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エル・サポの滝の裏側は迫力満点!


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ちょっと引いて見るとこんな感じ


ここまででも結構楽しませてもらったが、前座に過ぎない。あくまでもこのツアーのメインはエンジェルフォールなのだ。エル・サポの滝の上に待機していたボートに乗り込むと一日目の宿泊地に向けて川を上る。


最初はボートから見えるテプイの奇観を楽しむ余裕もあるが、日が暮れてもなおスピードが緩むことのないボートの上にいると、体が冷え切りつらい移動となる。最初はにぎやかだった面々も寡黙になる。僕らはゴミ袋を自分たちの前に広げて水しぶきから己の身を守りつつ、寒さに耐えていた。


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ボートに乗り込みいざ出発!


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テプイと虹


日が暮れてから二時間ほど経って宿泊地のアオンダに到着。寝床はハンモック。人数に対してスペースが狭く、少し揺れると隣の人にぶつかってしまうほどの混雑ぶり。


質・量ともにまあ満足できる食事を終えると早々と就寝。防寒とムシ対策として、僕らは自分たちで持ってきた寝袋にくるまって寝た。おかげで寝返りは打ちにくいが、ハンモックの上で思った以上に快適な睡眠をとることができた。


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夜は冷えるので寝袋があって助かった


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ハンモック密度はかなり高い


翌朝、いよいよエンジェルフォールに向けて出発。昨日は気にならなかったが、朝日を浴びた川の水は茶色。周辺の植物に含まれるタンニンが流れ込んでいるためらしい。


ボートが進むにつれ、次から次と姿を現すテプイはそれぞれに個性がある。エンジェルフォールと見まがうばかりの滝を有するものや、てっぺんが平らではなく尖塔を並べたようなもの。これらの景色だけでもここまで来た甲斐がある。


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タンニンが流れ込んでいるために川の水は茶色


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ボートも燦々と輝く太陽の下なら爽快だ


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エンジェルフォール以外にも立派な滝がある


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尖塔が並んだようなテプイは珍しい


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エンジェルフォールに着くまでにお腹いっぱいになりそうだ


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こんな場所もボートで抜けていく


そしてついにエンジェルフォールを有するアウヤンテプイが視界に入ってきた。滝は雲に隠されて途切れ途切れに見えるだけ。しかし、世界一という言葉に弱い僕は、まだ一部をさらけたにすぎないエンジェルフォールを見て「やっぱり貫禄がちゃうな〜」と早くもスイッチオン!


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やっと見えた!雲をまとったエンジェルフォールだ!


川からエンジェルフォールまでは距離があるのでボートが進んでも滝はあまり近づかない。今晩の宿泊地となるラトン島でボートを降りて一時間足らず歩くと、ようやくドーン!とエンジェルフォールが目の前に。


世界一を誇る滝の落差は東京タワー約三本分の978メートル、……と数字を並べてみても実感が湧かないのが正直なところ。本当の大自然というのは人間のスケール感や遠近感を狂わしてしまうものなのか。エンジェルフォールのでかさがいまいちピンとこず、隣に東京タワー(別にエッフェル塔でも自由の女神でもいいけど)を立ててその大きさを確かめたいと思った人は僕だけじゃないだろう。


落ちてくる水は途中で霧状になり滝つぼは存在しない。が、霧を集めた川がエンジェルフォールの下にでき、その川が小さな滝を作り、その滝が滝つぼを作っている。そこではみんな泳いだり、日光浴したり、ただエンジェルフォールを見上げたりと思い思いに時間を過ごしている。滝ばかりに目を奪われていてはもったいない。滝の後ろを振り返るとそこには壮大なテプイが広がっていた。


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みんなの視線の先には……


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世界一の落差を誇るエンジェルフォールが!


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世界一の滝をバックに記念撮影


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滝の後ろにも素晴らしい景色が広がってます


ツアー会社の不手際のせいで、僕ら二人はこれまで行動を共にしてきたメンバーとは別れ、スロバキア人のツアーに飛び入り参加することになった。エンジェルフォールが見えるラトン島で一泊するためにはそれしか選択肢がなかったのだ。


昼食後、アオンダに戻るメンバーを見送り、エンジェルフォールを見渡せる川岸まで出て静かな時間を過ごした。


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川岸から見るエンジェルフォール


スロバキア人の集団に混ざって最初は浮き気味だった僕らも、夕飯の席では日本とスロバキアのことを互いに話しているうちに打ち解けてきた。彼らは日本のことをよく知っていた。日本人は働きすぎること、一生一つの会社で勤め上げる人が多いこと、ひらがなという文字を使うこと……。


スロバキアのことを何も知らない僕らは申し訳ない気持ちになったが、逆にいろいろと質問してスロバキアの現状というものを少しだけ知った。チェコ・スロバキア時代に工業が集中していたチェコと分離し当初は厳しい経済状況だったこと。その後、外資(特に韓国企業)の導入に成功し、今はスロバキアのほうが豊かであるということ……。そして、その現実に彼らは誇りを持っているようだった。


スロバキア人にとって南米旅行はかなりの贅沢と言っていたから、日本人のほうが金は持っているのだろうと想像できるが、スロバキアの企業には従業員に六週間の休暇を与えることが義務付けられているとか。多くの西欧諸国と同様、金だけでは得られない豊かさがあるということを社会全体で共有している国なんだろう。


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スロバキア人夫婦のミキとアンドレア


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夜のエンジェルフォール。下のほうにうっすらと虹ができているような……


ツアー最終日。朝日を受けて輝くエンジェルフォールを眺めながら、気持ちよく晴れ渡った空の下、ボートでカナイマに向け出発。途中、何度もエンジェルフォールを振り返る。エンジェルフォールが見えなくなっても、カナイマに着くまで絶景が途切れることなく続いた。


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朝日を受けて輝くエンジェルフォール


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帰路も天気に恵まれ素晴らしい景色を堪能


エンジェルフォールは期待を裏切らず素晴らしかった。と同時に、エンジェルフォールはギアナ高地のほんの一片でしかないことを実感。どこまでも奥深く、秘境感に満ちたギアナ高地、それ自体がとんでもなかった。次のロライマ登山に向けても期待が高まる。


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最後にセスナからカナイマを一望



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