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◆夫婦で世界一周





写日記19.野グソ、風呂ナシ五泊六日!ロライマ登山

ベネズエラ(サンタエレーナ・デ・ウアイレン、ロライマ山)

2007年11月28日〜12月5日



ロライマ登山の拠点となるサンタエレーナ・デ・ウアイレン行きの夜行バスに乗っているときだった。夜中に起こされると、目の前には警察(軍隊かも?)の男が。ベネズエラではよくある検問だ。パスポートのコピーを見せたが警官はオリジナルじゃなきゃダメだと言う。嫁さんはオリジナルを持っていたので僕だけバスを降り、荷物室を開けてもらって山積みの荷物の中から自分のバックパックを探した。


やっとバックパックを見つけて引っ張り出したときには、警官のいらつきが最高潮に達していたらしく僕はいきなり怒鳴られて詰所に連れて行かれた。そこで荷物チェック。そしてボディーチェック。戸惑う僕を警官三人であざ笑うようにしてからかう。


警官たちが「ドルは持ってないのか?」と賄賂を匂わせ始めたので、僕はスペイン語が全く分からない作戦に切り替えた。警官たちはそんな僕にうんざりしたのか、「もう行け!」と怒鳴った。なんとか事なきを得てバスに戻った僕は、公権力が歪んだときの怖さを、怒りの中で噛みしめた。翌朝、後味の悪さが残った状態でサンタエレーナに到着。


サンタエレーナはロライマ登山の拠点となる町であるとともに、ブラジル国境に面した町でもある。町には通貨ボリーバルの札束を握った闇両替屋がたむろしているが、その行為を隠す様子は全くなく、あまりにもあっけらかんと事が行われていたので拍子抜けした。僕らも何度か彼らの世話になった。


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ブラジルはもうすぐそこ


ギアナ高地には数多くのテーブルマウンテン(現地語でテプイ)が存在するが、特別な装備も必要とせず登ることができるものは限られている。ロライマはその中でもっとも手軽に登ることができるので、テプイに登りたいと願う旅行者の多くはロライマを目指す。


しかし、手軽と言ってもそれはほかのテプイと比べた場合の話であって、決して楽チンではない。一般的なロライマ登山ツアーは五泊六日の日程。その間、シャワーはもちろん、トイレすらない日々を強いられる。晴れれば射すような陽射しに体力を奪われるし、雨に濡れながらの登山もうんざりする。それなりの覚悟が必要だ。


ちなみに先住民ペモン族の言葉で「偉大」を意味するロライマ。その隣にあるクケナン山とともになぜかこの二つのテーブルマウンテンだけはテプイとは呼ばれないらしい。先住民にとって特別な意味を持つ山なのだろう。


僕らはUFO好きのオーナー、ロベルトが経営するMystic Toursでロライマ登山を申し込んだ。一緒に五泊六日を過ごすメンバーは、アイルランド人カップルのイルとジャニス、イタリア人カップルのアンブロージョとルイーザ、そしてガイドのロジャーにポーターのジョエルとロバート。計九名の隊でロライマ山頂を目指す。


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必要な物資はビニール袋に詰めて防水対策


ロライマの麓にはグラン・サバナと呼ばれる緩やかな丘陵状の草地が広がっている。一日目は緩やかなアップダウンを繰り返しながらグラン・サバナを歩くだけなのでそれほどしんどくない。しばらく歩くと前方にロライマとクケナンが並んでいるのが見えた。頑張れば今日中にもロライマに着きそうな気がするが、大自然の中で人間の遠近感が当てにならないことはエンジェルフォールでも経験している。


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正面にロライマ(右)とクケナン(左)を見ながら歩く


少しきつかった上りを終えて休憩をしているときに地震が起きた。結構揺れたし、時間も長かった。日本で揺れると建物や家具が倒れたり壊れたりすることを案ずるが、この大平原の上ではそういう心配はない。ただ、大地から直接に伝わってくる揺れに畏怖の念を覚えるだけだ。


出発から三時間ちょっとで一日目のキャンプ場に到着。僕たちはクケナンが目の前にきれいに見える場所にテントを張ると、すぐ近くを流れるテク川へ。ここでの水浴びが本日のシャワー代わり。水は冷たいが一度入ってしまえばすぐに慣れる。


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川での水浴びがシャワー代わり


水浴びもして爽快、目の前にはクケナンの雄姿。ぼーっと物思いにでも浸りたい気分だが、それを許してくれないのがプリプリと呼ばれる吸血虫。


見た目は蚊とハエを足して二で割ったものを体長1ミリぐらいに縮小した感じ。蚊のように病気の媒体となることはないので安心だが、群がり方がひどい。十秒動かずにいたら、数十匹のプリプリがズボンについている。刺されたことに気付かずいると、そこからは針でも刺したかのように血が垂れていた。そして痒い。こいつさえいなければ最高のキャンプなのに……。


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キャンプ場から少し歩くときれいにロライマが見えた


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日没後の空にクケナンが浮かび上がる


二日目。六時起床。朝食を終えるとテントを片付けて出発。僕らはマイテントなので、自分でテントをしまわなければならない。その分、ほかの二組と比べると荷造りに時間がかかってしまうのだが、そんな僕らをも待たせるのがイタリア人カップルのアンブロージョとルイーザ。これが噂に聞くイタリア人か。


出発後すぐ、昨日水浴びをしたテク川を渡る。靴を脱ぎ、ズボンのすそを目一杯上げ、滑らないように靴下を履いたままで渡河。別になんてことはない。


テク川を過ぎて三十分ほどで次はクケナン川にぶつかる。テク川よりも幅が広く、深さも流れもある。滑る石、滑らない石を見極めながら慎重に歩を進める。思った以上に大変な渡河だったが、全員無事に対岸に。そして、ここで本日の水浴びタイム。アイルランド人カップルのイルとジャニス以外は川に入って体を洗ったり泳いだり。


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クケナン川で汗を流す


この直後から先の見えない上りがひたすら続き、せっかくきれいにした体は汗でベトベト。途中で雨も降り始めて、ロライマ登山は一気に厳しさを増した。嫁さんは極端に上りに弱いのでここで遅れをとるが、歩き方はしっかりしている。それに比べて、同様に遅れ始めたアンブロージョは足がガクガクで表情にも余裕がない。濡らしてはならない寝袋も靴もびしょ濡れだし、このあと大丈夫だろうかと他人事ながら心配になる。


疲れているのは二人だけではない。休憩時にはみんな無口。ロジャーも「三日目のほうが上りはきついけど、一番疲れるのは二日目なんだ」と言っている。最後の上りかもしれないという期待を何回も裏切られたあと、キャンプ地に到着。


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二日目はかなりきつい!みんなクタクタ


雨はまだ降っている。温かい紅茶を飲みながら雨宿りをしていると、徐々に晴れ間が広がってきた。太陽が顔を出すと、汗と雨で冷えた体が喜び、この上ない幸福感に包まれる。こういうとき英語には便利な表現がある。This is the life!


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二日目のキャンプ場にて。晴れれば至福の時間


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こりゃまた素晴らしい景色


この夜、面白いものを見た。それは最初、人工衛星のようにゆっくりと一定の速度で夜空を移動していたが、突然ジグザグ飛行を開始。嫁さんも同じ光に気付いている。「あれ動きおかしいよな」と話しているうちに、一気に加速してそれはロライマの向こうに消えた。


僕は科学的根拠のないことを簡単に信じるたちではない。だから、それをすぐに宇宙人の乗ったUFOだと言い切るつもりはない。後日、「それは戦闘機じゃないか」という指摘を受けたがその可能性はあると思う。ロライマはベネズエラ、ブラジル、ガイアナの三ヶ国にまたがっているので、軍事訓練も盛んかもしれない。ただ僕に言えることは、そういう動きをした光が存在したということ。それのみである。


さて三日目。早寝早起きの生活にも慣れてきた。今日はジャングルの中をロライマ山頂まで一気に登る。一人大幅に遅れをとっているのがまたしてもアンブロージョ。ガイドのロジャーは彼の遅さに飽きれているが、僕らにとってはいつも準備に手間取り、歩くのも遅いアンブロージョに精神的に救われている。僕らもどちらかというとノロマなほうだから。


ロライマの絶壁を右手に見ながら山頂を目指す。昨日の雨で絶壁からは水が流れ落ち、即席の滝ができている。雲がてっぺんを隠しているのであとどれくらいなのか見当がつかないが、岩場が目立つ地形になってきたので山頂はもうすぐじゃないか。


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ロライマの絶壁を見上げながら歩く


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目まぐるしく動く雲の合間に下界が見えたり見えなかったり


ロジャーが言ったとおり、二日目よりは疲れがたまらないうちに山頂へ到着。地味な背の低い植物と岩場だけの荒涼とした地。これが太古の地球の姿なのか。よく月面に例えられるが、なるほどと思う。草原、ジャングルと緑に満ちた自然の中を歩いてきただけに、特にこの地の無機質な感じが際立つ。


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ロライマ山頂は荒涼とした世界


そして今日、明日と二日間泊まることになる場所は絶壁の凸凹を利用した狭い空間。テントを三つ張るのがギリギリのこのキャンプ場はHotel Indiaと呼ばれる。


少し離れたところにロジャーがトイレを用意してくれた。トイレといっても小はその辺に、大はビニール袋に中に納まるように用を足し、乾燥と消臭のために石灰の粉を振りかけるというもの。これならあっさり野グソ(一日目、二日目は野グソだった)のほうが楽だが、ロライマ山頂にクソを残していくことは禁止されているので仕方がない。


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崖の窪みを利用したキャンプ場。その名はHotel India


昼食後、僕と嫁さんは散歩にでかけた。雲で視界もきかず下手に歩くと迷子になりかねないので、ロジャーの目の届く範囲でのみ自由行動が許される。


よく見かけるのがパイナップルの葉にそっくりな植物と、とげ型のつぼみが集合して球状になっている植物。球状のつぼみからときどき黄色の花を咲かせているものがあったが、普通の美的センスできれいと思えるものではない。いかにも「厳しい環境で頑張ってます」といった風貌だ。唯一、「これはきれいやな」と素直に思えたのが大きな花弁でラッパを作っているピンク色の花。


見つけると一番嬉しいのはオリオフリネラと呼ばれるカエル。体長が2センチほどで黒い皮膚には水疱瘡のようなブツブツがある。毒を体内に持っていて、触ることはできるが食べることはできない。……と書くと随分グロテスクなカエルに聞こえるかもしれないが、跳ぶことも泳ぐこともできないオリオフリネラがのそのそと歩く様子は愛らしい。


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そこら中で見かけた植物。パイナップルに似ている


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これもたくさん生えてました


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山頂で唯一きれいだと思えた花


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跳ぶことも泳ぐこともできないカエル、オリオフリネラ


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食虫植物らしいが、メカニズムは不明


四日目。朝から霧が濃く、テントには朝露がびっしり。朝食を待っている間に晴れ間が見えてきたので、予定を早めてロジャーが出発を促す。


まず隣のクケナンが正面に見渡せる絶壁へ。晴れてればクケナンの雄姿とともに裾に広がるジャングルが一望できる絶景スポット。しかしロライマとクケナンの間には雲が居座って、クケナンがうっすらと見えるにすぎない。下界も雲の海で何も見えず。ここで朝食をとりながら二時間粘ったが小雨が降り出す始末。諦めて次の場所へ移動。


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晴れることを願いながら出発


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クケナンはうっすらと雲の向こうに見えるだけ


僕は写真をよく撮るので、知らない間にロジャーから遅れをとっていることが多い。僕の前後にだいたい嫁さんかアンブロージョがいる。ロジャーのすぐ後ろをキープすることに生きがいを感じているようにも見えるのがアイリッシュカップルのイルとジャニス。ほとんど写真も撮らず、黙々と歩いている。


不思議だったのがイタリアンカップルの二人。イタリア人ってもっといちゃつくイメージだったが、ルイーザは歩くのが遅いアンブロージョをいつも置き去りにしている。そして一人になったルイーザの横につくのがポーターのジョエル。誰から見てもジョエルがルイーザに気があるのが見え見えだが、アンブロージョがやきもきする様子は全くない。寛大な心の持ち主なのか……。


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まるで自然が創り上げた神殿のよう


ほどよい深さの水を湛えた天然プール、通称クリスタルプールに着いた。晴れていれば思いっきり飛び込みたいところだが、強さを増した雨の中では入る気にならず。岩陰に入って雨宿りをしていると、二十人ぐらいの集団がやって来た。歩き方からして、どうも日本人っぽい。


近づいてくると日本語が途切れ途切れながらも耳に入ってくる。やはり日本人。僕と嫁さんはアメリカから始まったこの旅で、日本人とは数えるほどしか会ってないので(グランドキャニオンを除くと)、ロライマのてっぺんで日本人と会えたことにやや興奮。団塊世代のツアー客。ギアナ高地までやって来て登山をやるとはタフな人たちだと感心していたが、なんと、ヘリコプターで山頂に飛んできたとか。


ほかのメンバーは僕たちが日本語で会話しているのを興味深そうに見ていたが、気付けばロジャーがプールに入っていた。僕らは相変わらず遠慮気味。汗は流したいけど、雨降ってるし、寒いし。


けど僕はこの日本人のおっちゃん、おばちゃんたちを目の前に妙に見栄を張りたくなってきた。「こんなバカをやる元気な若造もいるんですよ」と言いたくなってきたのだ。飛び込み台のごとくプールの脇にある岩によじ登りダイブ!調子に乗って飛び込んだはいいが、やはり冷たさは半端じゃなかった。でもみんなの拍手を受けてハッピーな気分。


ダイブこそしなかったものの、続いてアンブロージョもプールに入り丹念に体を洗い始めた。そして意外や意外、今まで全く水浴びをしていなかったジャニスが参戦。ロライマ山頂という別世界にやって来てみんなおかしくなっているのかもしれない。


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雨にもマケズ、寒さにもマケズ、意地でダイブ!


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ジャニスと一緒に。ツアーの皆さんに囲まれて


一人のおばちゃんからぬれせんべいを餞別にいただいた。ツアーの皆さんと別れてクリスタルプールを出発すると、すぐに雨が激しくなってきた。雨宿りを挟みながら、無数の水晶が転がっているクリスタルバレーを抜けてHotel Indiaに戻ってきた。


今のところ、まだ絶壁からの展望を得ぬまま。夕方に予定しているロライマ最高地点への散歩がラストチャンス。頼むから夕方には晴れてください、と祈りつつシエスタ。


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白い物体の正体は水晶。まるで天の川


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こんなにごつい結晶の固まりも


シエスタから目覚めると晴れ渡っていた!というのを期待していたが相変わらずの雲、雲、雲。しかし、天気が変わるときはあっという間。雲の間に下界が少し見えるようになると、見る見る晴れ間が広がってきた。


ロジャーから出発の号令がかかる。晴れている間に早く最高地点へ到着したくて気が焦る。それはみんな同じのようだ。いつも通り遅れをとっているアンブロージョの何か悪口を、イルがジャニスに言ったらしい。ジャニスが「そんな意地悪言っちゃだめでしょ」とたしなめていた。


誰もが今回は大丈夫と思っていた。だから一面真っ白な最高地点にたどり着くとみんなの表情に落胆の色がありありと浮かんだ。ジャニスが"Such a pity...(すごく残念……)"とつぶやいているのが聞こえてきた。


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ロライマ最高地点でも天気に恵まれず……


Hotel Indiaにいるときに何度か晴れ間が広がることがあった。そういうときに出かけていれば下界がきれいに見えただろうにと、ロジャーを少し責めたい気持ちになった。チリポ、アレナルそしてロライマと最近天気に見放されることが多い。


Hotel Indiaへの帰路でまた雲が薄くなってきた。ロジャーは進路を左にずらした。別の展望ポイントへと向かうのだろう、との期待を抑えることができず急ぎ足でついて行く。


ロライマの縁にはやって来たがまだ晴れきらず。それでもこれまでで一番の展望。テンションが上がる。そのうち、クケナンを覆っていた雲が絶壁を滑り落ちるように動き始め、視界がさらに開けてきた。


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これまでで一番の展望にご機嫌


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クケナンにかかっている雲がまるで滝のように下降してます


正面にはグラン・サバナが地平線まで続いている。そして右手にはクケナンがくっきりと。雨が降ったおかげで、クケナンには力強い一筋の滝が生まれている。そして下を見れば、昨日抜けてきたジャングルが。この全てを一枚の写真に収めきれないのがもどかしいが、それよりもやはり自分の目でこの絶景を見られる幸福が顔を自然とほころばせる。


記念撮影大会が終わったら、みんな思い思いの場所でこの景色を楽しむ。そんな僕らを見るロジャーも安堵感と喜びに包まれているように見えた。深い目尻の皺がさらに深くなって優しい表情をしていた。ロジャー、さっきは責めてゴメンなさい、と心の中で謝罪。


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正面にはグラン・サバナがどこまでも広がる


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きれいに晴れたところで記念撮影


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この景色を見てこそロライマに来た価値があるというもの


五日目。二日目と三日目を費やして上ってきた行程を一気に下る。足に負担が大きいハードな下山。アンブロージョはいつにも増して大きく遅れ、視界の広い草原地帯になっても姿がなかなか見えない。嫁さんは風邪気味のつらさも重なり涙を流している。それを優しくフォローできず、泣いたことに苛立った自分に自己嫌悪。苦い下山。


初日に泊まったテク川のそばのキャンプ場まで来ると、ロライマ山頂の厳しい気候は和らぎ、冷たい川での水浴びが気持ちいい。しかし、プリプリがいる。穏やかなジャニスが"I hate it!(ムカつく!)"とキレるほどだ。グラン・サバナではプリプリ、山頂では寒くて雨がちな陰鬱な気候。ロライマ登山に苦難は尽きない。


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雨で上りのときよりも滝の水量が増していた


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ロライマをバックに。珍しくきれいな青空が


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プリプリさえいなければ最高のキャンプ


最終日、六日目。嫁さんの体調は改善。表情も明るいので一安心。そしてアンブロージョを除いた五人が筋肉痛でヒィヒィ言っている。アンブロージョだけ平気な顔をしているのが謎。これまでずっと、誰の目にも彼が一番疲れ切っているのが明らかだったのに。


最終日にしてアンブロージョとルイーザはカップルじゃないという事実が判明!二人はただの親友。そしてルイーザの彼氏とアンブロージョも大親友らしい。それはそれでいい関係だけど、僕は三枚目キャラのアンブロージョと、美人で愛嬌たっぷりのルイーザというカップルに好感を持っていたのに無性に残念な気分。


これで二人にベタベタ感がなかったことと、ジョエルが分かりやすくルイーザにアタックしていた理由が分かった。嫁さんの勘ではアンブロージョはルイーザのことが好きなのでは、とのこと。それが本当だったら切なすぎるが、果たして……。ちなみにアンブロージョに彼女はいない。


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どこまでも続きそうなトレイル


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視界の半分は空、もう半分は草原


今日もイルとジャニスは二人で黙々と先頭を歩き続けている。アンブロージョとルイーザとは昨晩、日本のマンガについて大いに話が盛り上がったことで、すっかり距離が縮まり最終日にしてよく話すようになった。ま、その中で二人がカップルじゃないことも判明してしまったわけだが……。


最後の最後までしつこく続いたアップダウンに苦しみながらも全員無事にゴール。握手で互いを称える。ロジャーもジョエルもロバートも、握手で僕らをねぎらってくれた。


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嫁さんとルイーザもすっかり仲良しに


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最後にロライマと歩いてきた道を振り返る


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寄り道して最後の水浴び!


その夜はサンタエレーナで打ち上げ。ビールで乾杯したあと、あまり美味しくない中華を突きながら歓談。みんな、ロライマ登山を達成した陶酔感とビールで気持ちよくほろ酔い。その酔いを引き連れて次はディスコへ。2時過ぎまで楽しい時間は続いた。


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サンタエレーナに戻ってきて打ち上げ


翌晩、サンタエレーナを発つ僕らをアンブロージョとルイーザが見送りに来てくれた。いつもユーモアたっぷりのアンブロージョがしんみりしているのが嬉しくもあり切なかった。「プレゼントがあるんだ」とカバンから取り出したのはラム酒。今日の昼、ランチに一緒に行ったときに嫁さんが欲しがっていたのを覚えていたのだろう。


「これを飲むたびに、僕のことを思い出すよね?」とキザなことを言う。熱いものが込み上げてきたが僕は抑えた。嫁さんは抑えきれず手の甲で目元を拭っている。しめっぽっくなってきたので、最後は抱擁と握手、そして笑顔で別れた。


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アンブロージョとルイーザ。イタリアで再会なるか?!


ベネズエラではカラカスの治安に怯え、闇両替に失敗し、腐った公僕にからまれと、苦い思い出も多い。と同時に、ギアナ高地の絶景やアンブロージョとルイーザとの出会いは最高の思い出。カラカスで感じたつかみにくさは、この国に対する僕の想いにも共通する。



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