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◆夫婦で世界一周





写日記41.死海に浮く

ヨルダン(アンマン、死海)

2008年5月31日〜6月3日



シリアを北から南に縦断しヨルダンに入国した。フラッグキャリアのロイヤルヨルダン航空が世界的なアライアンスであるワンワールドに加盟していることから、中東では比較的先進国との距離が近い国なんだろうと思っていた。あとは死海とペトラ遺跡がこの国にあることを知ってたぐらいで、僕のヨルダンについての予備知識は非常に乏しかった。


ただシリアを旅行中に、僕らとは逆にエジプトからトルコに向けて北上している旅行者と何度かすれ違った。彼ら、彼女らの話をまとめると、ヨルダンはシリアよりも物価が高く、人もそれほどよくないということだった。だから、ヨルダン入国を目前にして心が浮き立つようなことはなく、ただ死海に体を浮かせることだけを楽しみにしていた。


シリアの首都ダマスカスからヨルダンの首都アンマン行きの国際バスでは、次から次とお菓子やジュースを分けてくれる太っ腹なヨルダン人のおじさんにお世話になった。入国審査官の青年はフレンドリーに迎え入れてくれたし、アンマンの安宿の裏通りにあった食堂のおじさんも親切だった。


しかしアンマンでは胸糞が悪い思い出を数え上げるほうがずっと簡単だ。タクシーの清算で釣りを確認していると「俺を信用しないのか!」と一方的にキレて去っていった(しかも、お釣りは足りなかった)おっさんとか、宿の隣の商店の横柄なオヤジとか、ジャガイモを一個だけ買おうと思ったら「一個だけ?」って鼻で笑った男とか……。


この際だから辛口になるが、そもそもアンマンは特に魅力のない都会だ。多くの日本人旅行者は、日本人びいきで人柄がいいというサーメルという人物に会うことを楽しみにアンマンへやって来る。しかし、僕らがアンマンを訪れた時期には運悪くサーメルは別の仕事でイランに行っているとかで、彼が普段働いている宿にはいなかった。


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別になんてことはないアンマンの町並み


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宿の裏通りはこんな感じ


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中東圏の庶民料理ホンムス(ペースト状の豆)は慣れるとクセになる味


どうも相性がよくない町だし、サーメルにも会えない。ならば、さっさと死海に行ってアンマンを離れよう。というわけで、イスタンブールから何度となく別れては再会しているリョウタと、これまたイスタンブール以来アンマンで再会したユリさんと一緒に死海への日帰り旅行に出かけることにした。


死海へはアンマンからミニバスで一時間半ぐらい。死海への道のりはひたすら下り坂。PRO TREKで高度を計っていると標高が途中でゼロになり、マイナスを示すようになった。死海は世界で一番標高の低い地上でもある。


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死海に到着。PRO TREKで計ってみると海抜マイナス365メートル


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湖岸には塩の結晶が転がっている


非常に高い塩分濃度ゆえに文字通り生物が存在せず、人間の体も浮いてしまうという死海。塩の濃さがそうさせるのか、砂糖が湯に溶けるときのように水はモヤモヤしている。


四人で並んで水の中に歩いて入っていくと、一番背の低いユリさんがまずバランスを崩して死海にポチャン。「溺れる〜」ともがいていたが、やっぱり浮いていた。次に背の低い嫁さんが立ったままの姿勢で叫ぶ。「浮いてる!」 仰向けになって浮いている姿は写真で何度も見たことがあるが、うまくバランスをとれば直立姿勢でも浮いていられる。これは新発見。


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いざ死海へ!


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こんなことが余裕でできちゃいます


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思い思いに死海を楽しむ


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死海での定番ポーズ。読書中でーす


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普段あまり本を読まない嫁さんも死海で読書


でも生物が住めないという塩分濃度は人間にも過酷で、何十分も浸かってられない。体中、特に股間あたりがヒリヒリしてくる。シャワーもパラソルもないその辺で遊んでいた僕らには三十分が限界。束の間の浮遊体験を楽しむと、すぐ隣の高級リゾートに死海側から忍び込みシャワーだけ失敬して死海をあとにした。


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遊び終わったあとは向こうに見えてる高級リゾートのシャワーを失敬して退散


これでアンマンは十分。次は中東で孤立している小国ながら、アメリカを盟友に持ち、世界の中で強い存在感を誇るユダヤ人国家・イスラエルの様子を見に行くことにしよう。



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