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写日記25.トラブル続出、ウユニ塩湖ツアーボリビア(ウユニ塩湖ツアー) 2008年1月28日~2月1日 ボリビア……。日本の約三倍の面積を持つ海なし国。インディヘナと呼ばれる先住民が国民の過半数を占める国。国土の約三分の一がアンデス山脈という高原の国。 南米の田舎。旅行者がそうボリビアを呼ぶとき、民族衣装に身を包んだ人たちが醸し出すエスニックな空気を好む気配と、衛生とか効率という言葉から程遠いこの国の現状に閉口する気配が共存しているように思う。少なくとも僕はそうだ。
ボリビア南部のトゥピサという町からウユニ塩湖ツアーに参加することにした。もちろん新ちゃんも一緒だ。ウユニ塩湖は世界最大の塩の湖。乾期には一面白の塩の大地が、雨期にはその上に水が張って鏡面の世界が広がる。南米旅行者の間ではマチュピチュやイグアスの滝に並ぶ人気観光地だ。僕は二度目のウユニ塩湖となるが、三泊四日のツアーでは塩湖以外にもいろんな見所に立ち寄るみたいなので楽しみ。 計十人のメンバーが二台のジープに五人ずつ別れて乗車。僕ら三人と同じジープに乗り込んできたのはイスラエル人のランとニール。もう一台のほうには、ロンドン出身のギャル三人、福山雅治似のスイス人、ダミアン、アルゼンチン人のクリスチャン。 ランとニール、ダミアン、クリスチャンの男四人は二台のジープにどう乗るかで最初もめていた。ギャル三人をとるか、日本人三人衆をとるかの争いだったのだろう。敗者のランとニール、申し訳ないね。 ドライバーのアルフレッドが運転するランクルでいざ出発。トゥピサを離れてしばらくすると、ランクルは山肌を縫うようにして走る。もちろん舗装なんてされてない。PRO TREKの高度計を見ていると標高4,000メートルを越すのも時間の問題みたいだ。高山病が心配。窓から入り込む空気もひんやりとしてくる。 尾根を走る車から下に見えるのがブライスキャニオンのような渓谷。ガイドは全てスペイン語なので地名もろくに覚えてないし、説明もランかニールが通訳してくれる以外はほとんど分からなかった。でも問題ない。絶景は言葉を必要としない。
トラブル1:高地でリャマを追いかけ、嫁さんぶっ倒れる リャマがたくさんいる平原で、料理担当のアメリアがサンドイッチの用意をしているときだった。リャマを追いかけてる人の姿が見える。こんな高地で走ったらぶっ倒れるで、と眺めていたら嫁さんだった……。 僕もリャマの写真を撮りたくて近づいていくと、嫁さんは既に追いかけるのをやめていたが様子がおかしい。「気分悪いんか?」と問いかけた直後、気絶するように大地に倒れた。 慌てて駆け寄って背中をさする(意味があるのかは不明)。ドライバーのアルフレッドを呼ぶつもりで「セニョール!」と叫んだら、なぜか新ちゃんがやって来た。新ちゃんも途中でただごとでない雰囲気を察したようで「大丈夫ですか?」と駆け足。おいおい、新ちゃんまでぶっ倒れないように! 二、三分そこでへたり込んだままじっとしていると、気分も体も落ち着いてきたようで、立ち上がって歩くことができるようになった。「あ~、びっくりした!」と嫁さん。こっちのセリフじゃ!!
昼食後はひたすら走る。標高4,000メートルを越えた場所でもなんだかんだと変化があり、飽きることはないが、これといった観光ポイントもない。ただ、車に揺られる時間が続く。途中でなんとかという集落に立ち寄り、その後また夕暮れ時まで走り続け、ようやく一日目の宿泊地に到着。
最低限の家屋だけが立つ、ツアー用に作られた宿泊施設。電気もなーんもないところにポツンとあるが、意外にも便所が水洗であることに驚き。夜の冷え込みはやはり厳しい。アメリアの作ってくれた野菜スープがありがたい。 ドライバーの男たちは暗い中で車の整備。アルフレッドの息子、イエベルも14歳ながらランクルを運転したり、車の整備を手伝ったりと大したもんだ。みなさん、お疲れ様。 夜空に稲光と星が共存する不思議な光景。都会から、日本から、遠く離れたところに来ていることをひしひしと感じながらツアー初日を終えた。
二日目は5時に起床し出発。もちろん外はまだ暗く寒い。今日は僕らのほうにダミアンとクリスチャンが乗ってきた。ギャル三人のお相手は日替わりということで平和条約を結んだらしい。 トラブル2:相方のランクルがぬかるみにはまる ランクルに乗り込むとすぐにまた眠りの続きに入った。次に目が覚めると、ぬかるみにはまったもう一台のランクルが目の前にあった。 ワイヤでつないで引っ張ってもダメ。みんなで押してみてもダメ。タイヤの下に石や枝をかませてもダメ。苦戦。まだ夜が明け始めたばかりで、外にいるだけでも寒くてつらい。 一通り試すと「朝ごはんを用意するから食べときなさい」と言ってアルフレッドたちだけで作業を始めた。アメリアもそれに応じて朝食の準備を始めた。アルフレッドたちが水や泥にまみれながら試行錯誤している間、僕らは食事。申し訳なく思いながらも、客を客として尊重するそのプロ意識に僕は感銘を受けた。「たかがボリビア」とナメていた。嫁さんも同じように思ったようだ。 果たして、僕らが朝食をいただいている間に車はぬかるみから脱出成功。朝日も顔を出し、暖かくなり始めた。
トラブル3:僕らのランクルがぬかるみにはまる 前方に雪山が見えてきた。蛇行する川も手前に見える。悠長にこの景色を車から眺めてたら、その川がぐんぐん近づいてくる。半ば予想はしていたが、ランクルはその川を横切った。川は渡ったが、そのあとのぬかるみに今度は僕らの乗っている車がはまった。 さっきの作業でコツを得たのか、今回はあっさりと脱出。それにしても、世界広しと言えどもこれほどランクルの性能がフルに活かされている場もそうそうないのではないだろうか。日本の舗装道路を走っているランクルが滑稽に思えてくる。
その後しばらくはトラブルもなく快調に飛ばしていた。ラグーナ・ベルデ(緑の湖)は天気のせいか、パンフレットの写真で見るよりも色が薄くて期待していたほどではなかった。何よりも、風が強くてゆっくり見学する気にもなれない。ここで昼食タイムだったが、あまりの寒さにみんな車内で食事を済ませた。
次の観光スポットは期待と不安が半々の温泉。海外で温泉といっても、ぬるかったり、汚かったり、風情がなかったりとがっかりすることが多い。今回はどうだろうか。 前触れもなくその温泉は現れた。一見プールのようで風情には欠けるが、ほかに何もない場所に温泉だけポツンとあるのはボリビアらしくてなかなかいい。 肝心の湯加減は合格点。あと3℃ぐらい温度が高ければ文句なしだったが、長めに浸かるぶんにはちょうどいい。しかし、温泉から出ると冷たい風が吹きすさんでいるので湯冷めには要注意。
トラブル4:相方のランクルにエンジントラブル発生 ぬかるみにはまったことを除けば、二日目のツアーは順調に進んでいた。が、温泉の直後に致命的トラブル発生。なんと、相方の車がエンジントラブル。素人がちょっとやそっと触ったぐらいではどうにもならないみたいで、こっちの車が牽引することになった。速度はガタ落ち。明るいうちに宿泊地にたどり着くだろうか。 途中にある間欠泉へは、一旦牽引ワイヤを外して僕らの車だけで行った。その際、ギャル三人がこちらの車に乗り込んできた。アルフレッド、アメリア、イエベルもいるから計十一人が乗車。定員九名の車に……。 この間欠泉、ときには高く噴き上がるらしいので、近くを歩いてたらヤバいんじゃないかと思うが、みんな特に心配する様子はなし。硫黄の匂いと湯気に囲まれ、ぼこぼこと水面が煮立っているかのような景色は地獄を連想させる。
トラブル5:嫁さんが高山病。さらに頭に荷物直撃でノックアウト 間欠泉のあとは、再びもう一台を牽引しながら二日目の宿泊地へ。暗くなる前になんとか到着。そして嫁さんがここでダウン。高山病の症状と思われる頭痛。イスラエル人のランとニールも同じ症状で苦しんでいる。なんだかツアーというより、耐久レースみたいな様相になってきた。 しかも、ランクルの屋根から荷物を降ろしているときに、ニールの重いバックパックが嫁さんの頭に落下。それでなくてもふらふらのところ、これが決定打となりノックアウト。今晩は安静にしましょう。 この宿泊地はベッドはきれいで嬉しいが、トイレが汚い。手桶で水を流すタイプだが、その水がないので便器の中はブツがてんこ盛り。これは耐え難い。申し訳ないが、満天の星空の下で野グソをさせてもらうことにした。 翌朝、空は晴れ渡っているが空気は冷たい。嫁さんもランもニールもだいぶ頭痛がマシになったようだ。リャマたちが朝日を浴びながら草を食んでいる風景だけは平和。
トラブル6:あわや十三人乗り?! さてツアー三日目の今日。問題なのが車だ。昨日エンジントラブルを起こした相方の車は結局修理不可能。で提示された案が、十人全員が一台に乗り込むこと。はぁ?間欠泉に行くときに、十一人乗っただけで限界だったのに、アルフレッド、アメリア、イエベルも入れて十三人なんてありえない。 しかし、地獄で仏とはこのこと。別のツアーの車に二人乗せてもらえることになった。福山似のダミアンとクリスチャンがそちらに移って、こちらは十一人乗り。これでも十分苦痛だが、最悪の事態は免れたようだ。
「あなたたちの車にお邪魔することになるけどいい?」なんてしおらしいことを言っといて、いざ同乗したらにぎやか極まりないのはもちろんギャル三人。スピーカーから洋楽が流れてきた日には、三人で振り付けもつけて大合唱。新ちゃんはまんざらでもなさそう??
さすがにこれ以上のトラブルは起きないだろう。ウユニ塩湖ツアーのパンフレットに必ず載っている有名な奇岩を見て、無数のフラミンゴが羽を休めている湖に寄って、昼食を食べて、通称「列車の墓場」を訪れて、夕方前にはウユニの町に到着。
ウユニの町は明日からボリビア各地で催されるカーニバルを前に、町全体が浮き足立ってる様子。カーニバル中に許されている水かけに備えて、水鉄砲の試し打ちをしてくる子どもがいたりして楽しげな雰囲気。
トラブル7:営業停止中の塩のホテルに宿泊。塩味のお茶が! 今日はウユニの町なかの宿に泊まるのかと思いきや、ウユニの町を抜けてランクルを走らせるアルフレッド。まもなくPlaya Blancaという塩でできたホテルに到着。ここは営業停止中という話をこの正月にウユニを訪れたサンタクララのたくさんから事前に教えてもらっていたのでびっくり。 確かに鍵は閉まってるし、電気もついてないし、人がいる気配もない。どうするのかとアルフレッドの行動を見守っていたら、なんとドライバを取り出して鍵を無理矢理開けてしまった。やがてホテルの関係者らしき女性が現れ、ともかく僕らは営業停止中の塩のホテルに泊まることになったらしい。 建物の壁や柱、ベッドやテーブルなどの家具が全て塩製。話のネタにはなるが快適性は低い。カビ臭いし、トイレの水は流れないし、シャワーもないし(今日はシャワー付きの宿という話だったのに……)。そして、アメリアが出してくれたお茶はなんと塩味!!これにはアメリアもびっくりして慌ててミネラルウォーターで作りなおしてくれたが、いやはやまいった……。
翌朝は塩湖で日の出を見るため朝早い。なのにランの誕生日だったこともあり、遅くまで騒いでいるほかのメンバーたち。心配してたら案の定、次の日は朝寝坊。「早く行くよ!」って嫁さんと起こし回ってようやくみんな起きてきたが、まったくやきもきさせられた。 朝のウユニ塩湖は、カメラで捉えられる範囲を超えて天空全体が赤~青のグラデーションを成している。太陽が昇るにつれてそのグラデーションの具合もじりじりと変化し、目を離すことができない。
トラブル8:三十分の滞在でウユニ塩湖終了 朝日が顔を出して空の色が落ち着いてくると、次は青空の下での塩湖鑑賞。雨期の今、薄く張った水が鏡面となり素晴らしい景色が広がるはずだ。 ほかの車がそうしているように浅い水の中をさらにランクルで進んでいこうとするアルフレッドにギャル三人が噛みついた。「水があるのに危ない!途中で何かあったらどうするの!!」と言い始めた。おいおい、昼間の塩湖も見ないで正味三十分の滞在だけで終わるつもりか?! 僕らはまだウユニ塩湖を回りたいと主張したが、結局ギャル三人の意見が押し通されて、そのままホテルに帰って朝食をとり、塩湖博物館を訪れるというくだらないスケジュールに変わってしまった。『ウユニ塩湖』ツアーに参加したのにメインを堪能できないなんて馬鹿らしすぎる!! トラブル9:メンバーがばらばらに とりあえずホテルに戻ったがやっぱり納得いかず、改めてアルフレッドに「僕らはもう一度塩湖に行きたい」と主張した。アルフレッドは認めてくれたが、既にチケットを購入している朝10時発のバスはあきらめろと言う。その分の補填をアルフレッドに要求したが「それはできない」とあっさり却下された。仕方ない。日本の感覚で物事を主張するのもここが限界のようだ。 しかし、ことはまだ終わらない。次はギャル三人が声を大にしている。彼女たちはもう塩湖はいいから10時のバスに乗りたいのに、それができないという話になっているらしい。僕らが塩湖を再度訪れることを主張したことが原因かどうかは不明だが、もう手がつけられない。なんで、こうも話がややこしくなるのか。 すったもんだの挙句、僕ら三人は通りがかりのほかのツアーの車に便乗させてもらいウユニ塩湖に向かうことになった。ギャル三人は恐らくアルフレッドの車でウユニの町へ戻ることができたのだろう。残りの男四人はどうしたかったのか、どうなったのか知らない。
青空の下に広がる水の張った塩湖。二度目の訪問でも色あせることなくすごかった。空が映った湖面は本物の空と溶け合い、地平が分からなくなる。そこをランクルで走ると大げさではなく、空を飛んでいるような気分になる。遠くの島が空に浮かんで見える。世界広しと言えども、こんな体験は雨期のウユニ塩湖でしかできないのではないだろうか。 贅沢を言うならばもっと雲が出ていれば、青と白が入り乱れてますます足元が不安定になるような面白い絵になるのだが、この日は青空が広がるばかりだった。
昼間の塩湖を満喫してホテルへ戻っていると、アルフレッドの運転するランクルと出くわした。どういう経緯でこうなったのかは知らないが、ラン、ニール、クリスチャン、ダミアンの四人を乗せている。 そして「こっちに乗れ」とアルフレッド。僕らは水の張った塩湖の上で車から車に乗り移り、ランクルの屋根に乗ってもう一度昼の塩湖に向かった。風を受けながら屋根から見渡すとウユニ塩湖の見応えがまたレベルアップ。サイコ~!
トラブルばかりで、状況も飲み込めず、翻弄されることの多かったこのツアー。でも、日の出に加えて日中にも塩湖を二回も見られたので結果オーライ。終わりよければ全てよし。 アルフレッドに腹を立てることも何度かあったが、彼のできる範囲で僕らを楽しませてくれようというプロ意識はドタバタの中でも感じることができた。最後になぜか僕ら三人だけ呼び出して、トイレットペーパーにくるまれた小さなゾウ(ウユニでなぜゾウなのかは深く考えない)の置き物をくれたときには思わずじーんときてしまった。 トラブル10:アメリアがランにほの字?! トラブルの多い中でアメリアの作る食事の美味しさだけは安定感があった。そのアメリアがイスラエル人のランが隣に座るようになってから少し様子がおかしかった。 ランはプレイボーイに違いない。優しい笑顔で話しかけ、何気に肩に手を回したりする彼にアメリアは撃沈されたようだ。少なくともメンバー全員にはそう見えた。別れ際の表情もどこか痛々しかった。ランも罪な男だ。
四日間、標高3,500~4,500メートルの高地を移動してきた。移動中に見える景色は絶えず絶景と言ってもいいほど。でも、空気は薄く、常に埃っぽく、揺れはひどく、シャワーも浴びれないトラブル続出の過酷なツアー。結果オーライと言えども、もうお腹いっぱい。三度目のウユニは……ないと思う。
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