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写日記51.サイを探してボツワナ(カーマ・サイ保護区) 2008年7月16日~7月19日 ジンバブエやザンビアと国境を接するカサネはボツワナ最北端の町。レンタカーはプレトリアで返却予定だから、ここからは一気に南下して南アフリカを目指すことになる。ただその前にボツワナで是非とも寄っておきたい場所があった。 カーマ・サイ保護区。一応『Lonely Planet(英語のガイドブック)』に載ってはいるが、これまで訪れた場所の中では知名度はキバーツリーの森に次ぐ低さだろう。そんなところに僕らが行こうと思ったのは、「あそこではたくさんのサイを見たよ!ボツワナに行くなら絶対寄ったほうがいい」とキャンピングカーに招いてくれたアレクサンドラとマーティンが絶賛していたからだ。 サイにはクロサイとシロサイの二種類がいるが、どちらも数が少なくアフリカにおいても見られる機会は限られている。エトーシャには二種類とも生息しているという話だが、僕らは残念ながら縁がなかった。そこで、あの二人のアドバイスに従ってカーマ・サイ保護区に行ってみるしかない!となったわけだ。
カサネを発ってからは途中キャンプ場での一泊をはさみ、翌日の午後にカーマ・サイ保護区に到着した。一泊分の入園料やキャンプ料金の支払いを済ませると、受付のふてぶてしい姉ちゃんがティーダ君を指しながら忠告した。「キャンプ場への道以外、その車で絶対走らないように。簡単にスタックするから」 ティーダ君でゲームドライブできると思っていたのに思惑が外れてしまった。ここまで来てサイを見ないで帰るわけにもいかないし、かといってサファリツアーは高い。慎重に運転したらティーダ君でも行けるんじゃないだろうか……。しかし、キャンプ場までの手入れされている道でさえ、浅く積もった砂にタイヤが埋まりがち。アフリカではどうもトラブルづいている僕らは大人しくサファリツアーに参加しようと決めた。 トラック一台当たりで料金が設定されているツアーだったので、一緒にシェアできる人がいれば安くなる。聞けば十分後にSueharaという名前で二名の予約が入っている。その人に頼んで同乗させてもらえば安く済ませることができるかもしれない。 四時ちょうどにタクシーでやって来たSuehara氏。驚いたことに日本人だった。ボツワナで、しかもこんなにマイナーな場所で日本人に会うとはこれっぽっちも考えていなかったので、Sueharaという音の響きに日本人の名前を連想することができなかったのだ。 早速スエハラさんに駆け寄り、「一緒のツアーに参加させてもらっていいですか?」とお願いしたところ快諾。スエハラさんと一緒にいた女性も「私たちも助かるから」と気持ちよく承諾してくれた。「しぶい新婚旅行やな~」と感心したのは全く的外れで、二人ともボツワナに派遣されている青年海外協力隊の一員だった。
すでに一年以上、自動車整備技術のボランティアに従事するスエハラさんは、現地語のツワナ語も操る落ち着きのある人物だった。女性のほうのヤマダさんはまだ赴任したばかりで、首都ハボロネで看護に関わるボランティアを近く開始するとのこと。今は現地視察を兼ねながらボツワナ国内の隊員を訪問中で、その一環としてカーマ・サイ保護区の近くで活動をしているスエハラさんを訪ねてきたということだった。 日本人に会えたことが単純に嬉しかった。なんせ、レンタカーの旅を始めて日本人と会ったのはこれが二回目。それが有名観光地でもないこんな場所だっただけに、驚きと喜びを隠せなかった。地元の人に溶け込んで直接的な手助けをするというのは本当に大変なことだと思う。それを実践している目の前の二人に敬服。
さて、日本人四人を乗せたトラックが動き始めた。サイ保護区という肩書きがついているけど、ここでもサイは決して簡単に見られる動物ではない。目を凝らしてサイを探す僕の目に飛び込んでくるのは、インパラ、スプリングボック、ヌーなどこれまでに何度も見てきた草食動物ばかり。 ひょっとしたらサイに会えないかもという不安が芽生え始めたころ、そのときは突然にやって来た。トラックが鋭角なカーブで急に停まった。何事かと周りに目を配ると、左手に大きな動物の尻が見えた。ゾウに似ているけど、それよりは小さい。大きな耳も長い鼻も見当たらない。 顔を見せてくれと念じていたら、それはトラックに並んで歩き始めた。顔が見えた。頭に立派な角が二本。クロサイだった。しばらく顔が見えていたが、またすぐに尻をこちらに向け奥の茂みに歩いていった。束の間の対面だったが、とりあえず一頭見れてほっとした。
その後もサイを探し続けたが、キリンやヌーの群れを見つけただけ。アレクサンドラとマーティンが語っていたようにたくさんのサイに会うことはできなかった。それでも、サイを一頭だけでも見たことでツアー代の元が取れただろうと打算し、僕は満足することにした。
日没を見届けてツアーは終了。スエハラさんとヤマダさんとはほんの二時間の付き合いだったけど、ボツワナで頑張っている日本人がいるという事実はサイの姿とともに僕の中にしっかりと刻み込まれた。
翌日は南アフリカに向かってひたすら南下した。ボツワナの首都ハボロネを過ぎた辺りでキャンプ場があればよかったのだが、見つからないまま国境に着いてしまった。南アフリカに夜間に入国はしたくなかったので、国境近くの道路から見えにくい高台に車を停め、車中泊を決め込んだ。 見事な満月の夜。異様に黄色い大きな月が山すそから顔を出していた。いつものようにビニールシートを敷き、そこで嫁さんが晩飯の準備を始める。僕は火付け担当。大自然の中で焚き火に当たり、ワイン片手に晩飯をつつけばいつだって贅沢な晩餐になる。キャンプ生活では寒さよりも、ひもじさよりも、いつも楽しさが勝っていた。
そんな楽しかった日々とももうすぐお別れだ。黒ちゃんに混ざってのバス移動の日々が始まる。いやいや、その前にプレトリアの治安もすごく不安だ。車という鎧をかぶったまま旅をしていた僕は、一ヶ月経ってもまだまだブラックアフリカに対して及び腰だった。
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