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◆夫婦で世界一周





写日記31.バックパッカー離脱!

ブラジル(サンパウロ周辺、サンルイス、レンソイス・マラニャンセス国立公園)

2008年3月17日〜3月29日



ブラジルに入国した。南米一の経済大国でありながらアマゾンやイグアスなどの大自然が手に余るほどあって、サッカー大国で、バリバリのラテンのノリで、日系人が数多くいて……といろんなキーワードは浮かび上がるが、その実態はよく知らないというのが本当のところ。


バックパッカーにとっては入国にビザが必要なこと、治安がよろしくないこと、物価の高さなどから南米諸国の中ではハードルが高めの国である。それでも僕らがためらわずにブラジルを訪れることができたのは、サンパウロ郊外に伯父と伯母が住んでいるからだ。


六年前に南米を一人で横断したときも伯父の家を出発点にさせてもらったが、今回はずうずうしくも二人で二週間ほどゆっくりさせてもらおうなんて気でやって来た。ちなみに伯父の息子がアメリカでお世話になった一朗君。絶景を求めての世界一周は、親戚の脛をかじりながらの地球周遊でもある。


イグアスからのバスが五時間遅れて、サンパウロに到着したのは深夜0時過ぎ。伯父と伯母は夕方からずっと待ってくれてるはず。急いで携帯電話に連絡すると、0時まで待った末にあきらめて今は高速道路を自宅に向かって飛ばしているとのこと。最悪の入れ違い。結局、翌早朝にバスターミナルまで再度迎えに来てもらって事なきを得たが、最初から迷惑をかけっぱなし。とほほ。


家に到着した僕らを無言で迎えてくれたのはほどよいスプリングのベッドにふかふかの枕、勢いのいいホットシャワー、そして伯父の作ってくれた和朝食。少し前までバックパックを抱えてバスターミナルのベンチで寝ていた自分たちが嘘みたいだ。


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和朝食にはビールのオマケ付き。幸せってこれだっけ?


結婚式で顔を合わせて以来二度目となる嫁さんはほとんど初対面みたいなものだが、気さくな伯父と伯母と打ち解けるのに半日もかからなかったようだ。夜にはカイピリーニャ(ピンガというサトウキビから作られたスピリッツにライムと砂糖を加えたカクテル)の勢いを借りて、夫が隣でハラハラするほど自分をさらけ出していた。そして、このとき覚えたカイピリーニャの味にすっかりはまってしまったようだ。


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カイピリーニャは見かけも口当たりもソフトだけどかなり強い!


ブラジルに着いて最初の一週間は家でゆっくりさせてもらったり、伯父たちが住むインダヤツーバの周辺を案内してもらったりして過ごした。治安が悪いとされるブラジルだが、僕らがそれを肌で感じることはなかった。外出の際はいつも車だったし、伯父と伯母が安全なところを選んで連れ出してくれていたからだが、家がコンドミニアムにあったことも大きいと思われる。


コンドミニアムとは高い塀に囲まれた土地に数十軒の邸宅が建てられていて、入るのに門番のチェックが必要となるような住宅地のことである。オートロック付きマンションの一戸建てバージョンみたいなものだが、治安の悪いブラジルでは本気で自衛しようと思ったらこれぐらい必要ということらしい。裕福な者が檻に入らなければならないのである。


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ベランダからの景色。コンドミニアム内は安全・安心


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伯母の誕生日祝い!でも一番がっつり食べているのは僕ら……


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ブラジルでいただくドイツ料理もうまし


インダヤツーバから車で高速を飛ばして二時間のサン・カルロスに住む娘さん、すなわち僕のいとこの礼子ちゃんとその旦那さんのレオンを週末に訪ねときには、近くの森の中を流れる川でラフティングを楽しんだり、ファゼンダ(農場のこと。レストランや宿泊施設も備えて観光できるところも多い)を散策したりした。


このファゼンダはポルトガル人が入植した当時、奴隷を使ってコーヒー栽培を行っていたという歴史的な場所でもある。勝手によその土地にやって来て、奴隷を酷使して極めた栄華が自慢できるものとは思わないが、今でもその子孫はブラジルで有数の良家として認められているようだ。そこに感じる違和感は否定できないが、貴重な歴史的資料をいとも簡単に見せて、触らせてくれる寛大さは大したものだ。


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レオンと三人でラフティングに挑戦!


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ポルトガルの植民地としての歴史はこんなところから始まっている


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歴史が刻まれた貴重な部屋。椅子に座ったりしても怒られない


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礼子ちゃん、レオン、楽しい週末をありがとう!


伯父と伯母にはベッドと食事の心配が不要な毎日を送らせてもらえるだけでありがたいのに、「レンソイスとパンタナールに行ってみたい」という僕らの願いまで叶えてもらった。その第一弾のレンソイス、正式名称レンソイス・マラニャンセス国立公園へは伯父が手配してくれたツアーに参加し、僕ら二人だけで訪れた。


白い砂丘のくぼみに雨期に降った雨水が溜まり、世界でもここでしか見られないような奇景が見られるという。雨期明け後の6月〜7月ごろがベストシーズンらしいが、3月でも水はある程度溜まっているらしい。期待に胸を膨らませ、まずは拠点となるサンルイスに飛行機で向かった。


サンルイスで現地ツアーに合流したが、ブラジルの旅行会社主催のツアーだから周りはブラジル人ばかり。旅程の説明も観光地のガイドも全てポルトガル語。でも僕らが言葉が分からないからといって誰もあきれたりしない。英語ができる人がいればその人が通訳してくれるし、そうでなければ片言のスペイン語とジェスチャーでなんとかなった。


アメリカで英語ができないと惨めだけど、スペイン語やポルトガル語の南米でそういうことはない。多くの人がちゃんと意思疎通を図ろうと根気強く付き合ってくれる。ブラジルはその中でも最も優しい国だと思う。


伯父はよほど高価なツアーに申し込んでくれたに違いない。サンルイスでの宿泊先はなんと五つ星ホテル!豪華さよりもセンスのよさが際立つ設計で、居心地のいい空間が展開されていた。こういうところに泊まれるのは嬉しいが、困ったのが食事。ホテル内のレストランで食事をするなんて僕らには贅沢がすぎる。


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人生最大のベッド!


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中庭にはクジャクが優雅に歩いてました


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使えるもんは使っとけ!とプールにも入っときました


こんなことを尋ねる客はこのホテルにはいないだろうと思いつつ、安く町へ繰り出す方法をフロントで聞く。教えてもらったローカルバスに乗りながら、適当な安食堂がありそうな場所を探す。しかしそれらしい店がある気配はないので、ショッピングセンターが目の前にある停留所でバスを降りてみることにした。


具合よくそこにあったフードコートで食事を済ませて、部屋で飲むためのビールを買い、さあ帰ろうと思ったら外は大雨。大人二人が雨粒から逃れるには一本の折り畳み傘は小さすぎる。いよいよ勢いを増す雨にすっかりずぶ濡れ。しかも帰りのバスが捕まえられず、結局タクシーを拾ってホテルに戻った。濡れそぼった日本人が、スーパーの袋を片手に五つ星ホテルのロビーを歩く姿はさざかし場違いだっただろう。


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五つ星ホテルから一転、フードコートでの夕食


翌日、サンルイスからマイクロバスで五時間かけてバヘリーニャスに移動。ホテルに荷物を置いたあと、いよいよ白い砂丘とのご対面。直径1メートル以上はあろうかと思われる車輪のついた四駆車によいしょと乗り込み砂丘に向かう。渡し舟で川を渡ったり、足元まで水に浸るほどの水たまりを走り抜ける。その間、終始ツアーメンバーのブラジル人のおっちゃん、おばちゃんたちは爆笑&絶叫。一緒にいるだけでこちらまで楽しくなってくる。


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ピラニアがいないことを願う……


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四駆では水しぶきが上がるたび大騒ぎ!


町を出て一時間ほどで砂丘に到着。が、期待していたほど真っ白という感じではない。少し茶色がかっている。雨で濡れてしまったせいかもしれない。砂丘に中にある水たまり(といっても、池と呼べるほどの大きさ)も鮮やかなエメラルドグリーンと聞いていたが、そこまで色は濃くない。こちらは曇りがちの天気が原因か……。


やはりベストシーズンを外したからかもしれない。すごいのはすごいけど、もっと体中を突き抜けるような衝撃を期待していた。白さだけに限るとアメリカのホワイトサンズ国定公園に軍配が上がる。それでも、陽気なブラジル人に混ざって水たまりで泳いだり、白い砂丘を散策するのは楽しい時間だった。


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ついにレンソイスに降り立つ


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まるで砂丘の中を川が流れているみたい


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こちらは水たまりらしい水たまり


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レンソイスで泳ぐ!水はちと冷ため


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もう少し青空だったらなぁ


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ひゃっほう!


レンソイスという場所に憧れを持つようになったのはサンフランシスコで壮行会を催してくれたたくさんに「僕のナンバーワンは断トツレンソイス!」って聞かされたから。そのたくさん曰く「レンソイスは絶対に空から見るべき!」とのこと。


聞けばツアーにセスナ搭乗は含まれていなかったので、僕らは片言のスペイン語で「飛行機に乗りたい」と申し出た。すると、それまでに仲良くなっていたアカマツ夫妻(旦那さんが日系二世の夫婦)も興味を持ち始めて、次の日のツアー行程終了後、急遽四人で乗ることになった。


翌日の行程は川をボートで上って小さめの砂丘(これはかなり茶色)を見に行ったり、ミニ動物園といった風情の場所に立ち寄ったりするもの。茶色いミニレンソイスには交尾しているトンボばかりが飛び交っているのが奇妙だった。


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ミニレンソイスは普通の砂丘のような色をしてました


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ちょっと前まではここも木が生い茂る場所だったのかも


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サルもヤギもウサギもヤシの実を食べてた


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オウム使い夫婦!


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イヌもちゃんと日陰を選んで休憩


そして本命のセスナ搭乗。僕らも興奮を隠せないけど、年配のアカマツ夫妻もはしゃいでいるのでこちらまでテンションが上がってくる。


離陸したセスナは小さな町をすぐに飛び出して、ジャングルのごとく密度の濃い木々が生い茂っている森の上空を飛ぶ。これがある場所から砂丘に変わる。徐々に風景が移り変わるのではなく、あるところを境に深緑から乳白色に色が一変するのだ。


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突如、森が砂丘に変わる


セスナが旋回して砂丘の深部へと入っていく。やはり天気のせいか純白とまではいかないが、数え切れないほどの砂丘と水たまりがどこまでも連なっている景色は圧巻!四駆で来たときにはこの無数の砂丘のほんの一片を見たに過ぎなかったのだと実感。場所によっては白が純度を増し、そのくぼみというくぼみに魅力的な緑色の水を湛えている。


石英の粒子が太陽光に反射することによりレンソイスは白く輝く。石英がなぜこの地に積もったのか、という疑問は解明されているが、まだまだ未知のことも多い地だ。人跡未踏のエリアもあるし、生態が未知の生物も存在するという。ただ美しいだけでなく、人間に侵されていない広大な大自然でもあるのだ。


向かいに座っているアカマツ夫妻もはしゃぐのをやめて、眼下の景色に見入っている。地球にはまだまだいろんな絶景が転がってるもんだ。レンソイスを、そして、セスナに乗るべきことを勧めてくれたたくさんに感謝。


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アカマツ夫妻も口数を減らして眼下の景色と撮影に夢中


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どこまでも続く砂丘と水たまり


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どこか別の惑星を見ているような気にもなる


このあとは再びマイクロバスに乗ってサンルイスに戻った。また例の五つ星ホテルだ。到着が夜遅かったのでさすがに外出はあきらめて、ルームサービスを頼むことにした。人生で初めてのルームサービス。部屋にいて食事が済ませられるという贅沢感とプライベート感はちょっと癖になりそうだ。


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ルームサービスに初挑戦。なかなかいいもんです


サンルイスには世界遺産に指定されている旧市街地があるが、正直そういうのは南米各地にあって、どれもスペイン調とかポルトガル調で似通っているから飽きている。


同じようにどこにでもあるがどこでも面白いのは市場。サンルイスの市場は特に代わり映えのするものではなかったが、それでも世界遺産に指定されている旧市街地よりはカメラを向けたくなるものがたくさんあった。


伯父と伯母がいないブラジルでは幼児ほどもコミュニケーションを取れない僕らだったが、ツアーメンバーやガイドに助けられ楽しくツアーを終えることができた。レンソイスの絶景はもちろん脳裏に焼きついているが、ブラジル人の陽気さと親切さも心に沁みて僕の中に残っている。


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こういう建築物にも飽きてきた……


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市場の片隅に潜んでいた黒ネコ


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カニ入り酒が名物なのかもしれない


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ヤシの実ジュースは冷えてれば結構イケる



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